均斉に桜桃並ぶ心安からず
蟻の列離れて帰るほかはなし
梅雨の花病みて怠る謂れなし
暗黒にそそげる梅雨は子をへだつ
病者睡て足裏くろく梅雨晴間
梅雨日の出平安と思へどねむられず
梅雨雲に触れ飛ぶ鳥は遠飛ぶや
灯るごと梅雨の郭公鳴き出だす
静臥の胸泉見て来し動悸せり
兜蟲道標のもとにひとり死す
炎天や友亡きのちも憂苦満つ
雷去りぬ胸をしづかに濡らし拭く
向日葵や咲く前に葉の影し合ひ
悉く遠し一油蝉鳴きやめば
業苦呼起す未明の風鈴は
わが斑猫妻と別れてかへす辺に
森出づる西日の道をおそれ行く
驟雨を伴れ来し病まざる草田男その夫人
晩夏光ベッドの端に身を起こす
病家族二つの蚊帳の高低に
桜桃を洗ふ手白く病めりけり
濃き低き虹を冠りぬ幾工場
虹消えて土管山なす辺に居たり
虹見し子の顔虹の跡もなし
煤煙急ぎ雲はしづかに朝焼けぬ