和歌と俳句

石田波郷

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梅落す夫人を日矢は射あやまつ

百日紅深息しては稿をつぐ

花過ぎし二人静も旱の香

向日葵の八方に雷たばしれり

昼あそぶ黄金蟲をり百日紅

韮の花坂としもなく息あへぐ

青梅や怠りて子に蔑さるる

風鈴の肋を打つて鳴りいでぬ

羽抜鶏駆けて病友在らざりき

すでに褪せぬ妻とわれとの麦藁帽

芭蕉玉解く麦丘人必ず来む

亡き友恋へばひしと恋しや糊浴衣

よろこびて囃す雀や袋掛

少年の去りし石踏み汲む

籠りつげば曇りつぐなり沙羅の花

蚊火の風夾竹桃の裏白葉

煮る妻の贔屓角力は負け去んぬ

蜂蜜はいまアカシヤどき多摩風に

椎若葉少女子も吹きしぼらるる

起ち直る草や早乙女の足過ぎて

万太郎逝きて卯の花腐しかな

梅酒酌むわが菩提樹の木陰あり

橡若葉術後一歳濃く過ぎぬ

街を来る主治医に逢ひぬ栃の花

夏立つ野何の焔ぞ棒立ちに