和歌と俳句

石田波郷

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露煌とわが嬰子は頭重たし

内も外も蟋蟀子規は幸厚し

蜩の森立交はすここは焼けず

生きて會ふ道に垂れたる葛を踏みて

道草の稗も垂れたり汝が裾に

葛の花母見ぬ幾年また幾年

秋風や一抹の泥くるぶしに

秋草に隠れ隠るる一日かな

秋草や焼跡は川また運河

百千の汗の顔蠢めきにけり

紅しそよぎて父母は遙かな

家を出て飲めばそぞろやきりぎりす

焼跡にあたらしく来しの歌

秋の風祭の銭を集められ

夜をかけてわが句売りたるいとどかな

夜の髪に跳来ていとどもつれけり

いのちなり露草の瑠璃蓼の紅

人を恋ふ野分の彼方此方かな

野分中つかみて墓を洗ひをり

顔一つ野分の墓を洗ひをり

夾竹桃花無き墓を洗ふなり