和歌と俳句

石田波郷

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稲妻のほしいままなり明日あるなり

搖動く萩など金を得るほかなし

葛垂るる胸算用をたたみ出づ

萩叢や酒あり合はす夜の雨

乙女さやか野分の供華をかきいだき

硝子戸に焼跡ゆがむ野分かな

野分の戸妻に追はるる如くなり

や草田男を訪ふ病波郷

草田男の日曜の胸白き

法師蝉自転車やすやす近づき来

熱さめてをり古郷忌の蟲の中

やながき話の苦の世界

さんさん蜩女の寫眞預かれば

けさ秋風焦土の民らただ急ぐ

かなかなの森出づ流れ何の香ぞ

焼跡の煙草の花を隠すなし

熱の口あけて見てをり秋の暮

いとど赤しほのぼの熱の上るとき

病み臥して鶏頭恃むことをせんや

月明の水吃々とさざめきぬ

君たちの戀句ばかりの夜の萩

冷まじき激流を詠み来しは誰ぞ