和歌と俳句

石田波郷

9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

子等遠し病力もて胡桃割る

鏡黒く秋日の切株纏きてをり

臥て読む劇病廊行けば秋の風

重大なる如く夜露の雫しつつあり

暁寒くコップに水の残り死す

わが鼻の未明に泛びなけり

末枯径吾妻よ胸をはり帰れ

雲暗き幾日衾に顎埋め

子を思ふ日ねもす捨菊見えてをり

暁に死せば息白き者等圍み立つ

屍の透きて通れる楢黄ばむ

鉈置きて病者跼めり露霜す

夕黄葉赤犬負けて駆けたりき

黄ばむ森にかかるや後ふりかへる

顔白め未明のの傾きつ

猛れると呟きをると二つ

の目の病者へくるや横に翔つ

病室の中まで黄葉してくるや

夜の柔かし睡られずをり

黄葉寒引揚寮へ道傲り

朱欒割くや歓喜の如き色と香と

残菊より低く病者等跼み合う