和歌と俳句

石田波郷

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あかあかと栄ゆれども咳地獄

雛の前妻は洩罎をさげて過ぐ

雛の灯われは盗汗を拭かれをり

春嵐鉄路に墓を吹き寄せぬ

春嵐弔歌一括せしを讀む

病兒睡て入学ちかきかなしさよ

春嵐鳴りとよもすも病家族

一樹無き小学校に吾子入れぬ

雨雲の暗き母と子入学

菜の花墓群見ゆるばかりなり

肋切りし日ははや遠し蝌蚪見れば

松の蕊赤きとき又菌を出す

墓への道春の荷馬車に後れつつ

子の髪の春の捲毛や墓地の中

黒くしづかに墓洗ふ水温みたり

早春の暁紅の中時計打つ

子の声の方へ春暁歩みをり

浅き水に泛びて山の蝌蚪あかし

病者吾が畦凹め立つ蝌蚪の水

谷のゆらぐわが息しづめをり

珈琲濃しけふ落第の少女子に

春嵐心難民めく夜かな

馬鈴薯を植う汝が生れし日の如く

苜蓿に肋骨缺除感すべなし

焼工場左右に赭しや入学