和歌と俳句

石田波郷

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義士祭香煙かへりきてもにほふ

寒林をしばらく兵のよぎりたり

寒木にひとをつれきて凭らしむる

ともに立てし外套の襟寒木に

夕映えて常盤木もあぶらぎり

寒林のガソリンにほふ方落暉

二重廻し夕映電車来て消えぬ

夜の饒舌の湯をすぐに出て

霏々とわれをうづむるわが睡

紀元節とほき巷をよぎる行進

青き松をいつしんに見るときあり

一等兵眼鏡ぞさむき日曜日

考へをれば一等兵牡蠣を食ひ去る

落葉寒人を忘ぜず町行けば

はたと寒く傷兵をみし行人裡

南に没る冬日を見ずや行人裡

足袋脱ぐやわが痩身を念ひ出づ

黝き槇電線をふりかぶり

ジヤズ寒しそれをきき麺麭を焼かせをり

英霊車去りたる街に懐手