和歌と俳句

石田波郷

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海戦や炭火の息のはげしさに

浅間山空の左手に眠りけり

木葉木菟悟堂先生眠りけり

おくれくる鶫のこゑも別れかな

枯草の棧舗なせるを偲ばむや

鷹現れていまぞさやけし八ヶ嶽

茶柱の小春ばかりにあらぬかな

霜柱俳句は切字響きけり

風花やあとりの渡りちりぢりに

落葉松や柄長渡りの木葉雨

松籟やしぐれぐもりの甃

篁の纒く蔓枯れや歌の橋

の指さされたる香かな

枕木や大津山科霜ふかみ

強飯の粘ることかな冬紅葉

丈高くまぎれず征けり冬紅葉

冬紅葉父をも顧みざりけり

母の目や軽便さむく吾去れば

佛飯の麥めでたさよ初霰

子供らにいつまで鶴の凍つるかな