和歌と俳句

石田波郷

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篁に朝が来にけり雪卸

父と子やかんじきの跡混へつつ

南天や八日は明日となりにけり

夕月に湯屋開くなり近松忌

世田谷に小家みつけぬ年の暮

年暮れぬ低き机に膝古び

西空の富士や甍や年の暮

夜の溝の奈落と落ちぬ年の暮

年の夜の探照燈の濃かりけり

どの家の犬にも見られ年のくれ

年迫る女の競りや道具市

三星の南廻りや寒の内

瑞の菜の三畝ばかりや寒の内

ろうかんや一月沼の横たはり

篁や九年母いよよ現はれて

松風や枯うね草に吹落とし

薄雪や簷にあまりて炭俵

雪上や雨ふりそそぐ藪がしら

春を待つ人篁にかくれけり

小机に縛られゐるや春隣