和歌と俳句

石田波郷

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大寒や城壁めぐる朝餉前

レコードを聴きに駈けだす氷かな

煙草より菓子たふとくて悴める

相對ふ三十路の顔や年の暮

名號を母が賜ひし師走かな

城壁のくづれんとしてかな

夢に見し事問ひくるや年の暮

降りいでしうつぱり低き夜の雪

討伐隊まだかへりこぬ暮雪かな

手袋やいま薬莢を拾ひつも

持古りし七番日記祀りけり

一茶忌や父を限りの小百姓

新松子その葉をむしることなかれ

新松子父を恋ふ日としたりけり

古暦戦場とほくなりしかな

冬の月ベッドにすがり糞まれば

渤海に傾ける野の兎狩

飛行雲しばらくあるや年の内

妄執や書を買置かす年の暮