和歌と俳句

石田波郷

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痩せし身をまた運ばるる寒の内

病院車寒の鶏冠山下なり

松濱のかがやく見よや寒の海に

よろめくや白衣に浴ぶる冬日ざし

よろめくや寒の夕日の黄金なす

道傍に海あふれたる暮雪かな

ひきかぶる衾みじかし寒の宿

温泉の海や月夜につづく寒日和

東京へ何日送らるる雪催ひ

口に出てわが足いそぐ初しぐれ

東京に出て日は西すの岸

鳰の岸女いよいよあはれなり

ニコライの鐘の愉しき落葉かな

風雲の少しく遊ぶ冬至かな

餓師走花八つ手などちつてなし

桑括る女をみる目ながしけり

冬の日を飛越す鷺の薔薇色に

悴みて瞑りて皇居過ぎゐしか

肥汲の汲んで了ひし年暮れて

橙に貝殻虫母は老いしかな

霜の槇父の手紙の世にありや

年越や几の上に母の銭

倖か死果てたるも年守るも

百万の餓鬼うづくまる除夜の鐘