和歌と俳句

石田波郷

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見廻せど蒲團ばかりや我も病む

寒き手やいよいよ恃むわが生きて

新聞なれば遺影小さく冴えたりき

嘆かへば熱いづるのみ年の暮

遠く寒く病弟子われも黙祷す

死者を語りて銭得し者も寒の内

砂町は冬木だになし死に得んや

雪めく雲いま病み臥すは一惨事

大寒やなだれて胸にひびく曲

楽ひびけ起きてはならぬ寒満月

の墓抱き起されしとき見たり

咳き臥すや女の膝の聳えをり

大寒や怒りて叫ぶ墓見えつつ

吾子の頬や冬日の墓の犇きて

春遠し衾の中にうごめきて

息白き妻が見てをり剃毛す

きりきりと冬夜リンゲル押入るや

つひにこの冬暁の茶をゆるされぬ

生繼げば小春の松の秀枝見ゆ

眠れぬ夜凍ててゆくらむ水一壺