和歌と俳句

石田波郷

正月の髷一高を出で来たる

元日殺生石のにほひかな

元日の顔洗ひをり不寝番

病室に元日の雨の傘をつく

元日の夜の妻の手のかなしさよ

羽子落ちて木場の漣あそびをり

初鴎ころびし子起つためらはず

年明くとベ ッドに凭りて足袋はけり

獅子舞の胸紅く運河渡るなり

春着着る子の遙けさよ熱の中

橋の上の獅子舞は波を見つつ行けり

元日や煙突よぎる鴎どり

木場の端いくつ越え来ぬ松の内

初夢もなき軒雀こぼれけり

若菜野や八つ谷原の長命寺

平凡に五十頭上の初雀

妻の座の日向ありけり福寿草

楪や厭ふべきものはひた厭へ

福藁にあふれて女流はなやぎ来

喜雨亭に賜びし年酒の酔ぞこれ

追羽子や森の尾長は森を翔び

福藁や樹紋飾りし古椿