和歌と俳句

石田波郷

元日や道を踏みくる鳩一羽

年酒の酔頭を深く垂れにけり

鏡餅荒山風に任せあり

初富士や蜜柑ちりばめ蜜柑山

傾ける日は爛々と飾り舟

夜咄に三日の酒のはてしなし

初春の山の地蔵となられけり

口籠りりに椿の鳩や読初め

橙や病みて果せぬ旅一つ

御降りの病院の道林貫く

御降りやややはなやぎて見舞妻

初夢の老師巨きく立たせけり

春着して十年患者とは見えず

元日の日があたりをり土不踏

命継ぐ深息しては去年今年

初鴉石鎚のある方なれど

松風や初荷車の楽過ぎて

書初の弱筆はすぐなげうちぬ

一門の女礼者や屋にあふれ

初烏望遠鏡は許しをり

書初の墨を磨るらんとして熄みぬ

青松の樹齢加へぬ病む吾も

元日の夜の注射も了りけり

初冨士は見ず裏窓に秩父ヶ嶺