和歌と俳句

河東碧梧桐

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

嬉しがる声の中芋畑を行く影したり

曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空

又隣のドラ声の夕べの真ツ白な

子規十七回忌の子供の話婦人達とおほけなく

稲が黄に乾いて踵の泥がイヤにくつゝいて

葛の花が落ち出して土掻く箒持つ

一葉一葉摘む桑の阿武隈芒

家が建つた農園のコスモスはもう見えない

長良川落鮎の水の顔がほてつて

航海日誌に我もかきそへた瓶の撫子

赤土のなだれの女郎花咲く窓べ

牧場から来た女の穂芒に吹かれ行く

稲の秋の渡し待つてゐるどれも年寄りと話す

木の間に低く出たを見て戸を引いてしまふ

散らばつてゐる雲の白さの冬はもう来る

中庭の柑子色づき来ぬ藁二駄おろす

野茨の実をつむ人のつみあかずゐる

西瓜船の酒菰のまゝ秋になるいく日を過ごす

干し残るゆふべの藻屑尾の白き蜻蛉のゆきぬ

壁土を捨てた雨の湿りのこほろぎの出る

諏訪神社並木の松は芒萱原