和歌と俳句

杉田久女

前のページ← →次のページ

椿落ちず神代に還る心なし

斐伊川のつゝみの蘆芽雪残る

斐伊川のつゝみの蘆芽萌え初めし

蘆芽ぐむ古江の橋をわたりけり

蘆の芽に上げ潮ぬるみ満ち来なり

上げ潮におさるゝ雑魚蘆の角

若蘆にうたかた堰を逆ながれ

目の下に霞み初めたる湖上かな

立春の輝く潮に船行けり

春潮の上に大山雲をかつぎ

若布刈干す美保関へと船つけり

群岩に上るしぶきも春めけり

潮碧しわかめ刈る舟木の葉の如し

群岩に春潮しぶき鰐いかる

虚偽の兎神も援けず東風つよし

春潮の渚に神の国譲り

椿咲く絶壁の底潮碧く

春潮に真砂ま白し神ぞ逢ふ

春潮からし虚偽のむくいに泣く兎

兎かなし蒲の穂絮の甲斐もなく

春潮に神も怒れり虚偽兎

春寒し見離されたる雪兎

ゆるゆると登れば成就椿坂

春寒み八雲旧居は見ずしまひ

燈台のまたたき滋し壷焼屋