和歌と俳句

篠原鳳作

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鎧戸をすこしかかげてパナマあみ

丁髷を落さぬ老やパナマ編み

干ふんどしへんぽんとして午睡かな

飛魚や右手にすぎゆく珊瑚島

飛魚の翔けり翔けるや潮たのし

飛魚の我船波のあるばかり

飛魚をながめあかざる涼みかな

飛魚のついついとべる行手かな

飛魚や船に追はれて遠翔けり

煙よけの眼鏡ゆゆしや鰹焚き

鰹島魚紋なす波に下りもする

地下室の窓のみ灯る颱風かな

颱風をよろこぶ子等と籠りゐる

秋燕を掌に拾ひ来ぬ蜑が子は

颱風に倒れし芭蕉海にやる

颱風や守居のまなこ澄める夜を

颱風や守居は常に壁を守り

山羊が鳴く颱風の跡に佇ちにけり

帰省子に年々ちさき母のあり

つれだてる老母の小さき帰省かな