和歌と俳句

前田普羅

秋晴や一点の蝶嶽を出づ

ひるがへる力も見ゆる秋の蝶

漂へる蝶々黄なり秋祭

蝶々のおどろき発つや野菊の香

旅人が着物に包む蕎麦粉かな

唐黍を焼く火を煽ぐ古ハガキ

唐黍や強火にはぜし片一方

熊笹のささやき交はす狭霧かな

笹竜胆草馬の脊を滑りけり

主人より烏が知れる通草かな

秋晴の白根にかかる葉巻雲

秋晴や草津に入れば日曜日

大蛾舞ひ小蛾しづまる秋の宵

炭焼も神を恐るる夜長かな

浅間越す人より高し吾亦紅

きりぎりす鳴くや千種の花ざかり

迅しサラシナシヨウマ雨しづく

瘤山も浅間も霧に逆らへり

ひとところ八千草刈るや浅間山

吾亦紅枯首あげて霧に立つ

草刈も伏猪も霧にかくれけり

きりしづくして枯れ競ふ千種の実

石上の長柄の鎌もがくれ