和歌と俳句

高浜虚子

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加はりし猿蓑夏の輪講に

衣更て甲板に出ぬ島ありぬ

つくばひに杓横たふや若葉

孤島ありて畑ある洋の中

上海の梅雨懐かしく上陸す

家中の黴るはなしも可笑しけれ

藻の水に手をひたし見る沼の情

翡翠の紅一点につづまりぬ

蠅よけもかぶせて猫は猫板に

古家に蜘蛛を恐れて人住めり

薫風や楊枝くはへて水夫立つ

ふんまへて南志那海風薫る

我が前に夏木夏草動き来る

置燈籠包む茂りも高からず

美しき茂りの港目のあたり

籐椅子出すボルネオ海を航行す

籐椅子にあれば草木花鳥来

洋上や遥かに薄き雲の峰

帆舟あり浅瀬越しかね雲の峰

沖紺に渚浅黄や雲の峰

航海やよるひるとなき雲の峰