和歌と俳句

高浜虚子

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卯の花を仏の花と手折りもし

新緑瑞泉寺とやいざ行かん

手を頬に話ききをり目は百合

鉄線の蕊紫に高貴なり

朴散華而し逝きし茅舎はも

くちなしを艶なりといふ肯はず

鉄線の花は豪雨に堪へゐしか

洗髪束ね小さき顔なりし

ひろびろと富士の裾野の西日かな

老柳に精あり句碑は一片の石

避暑の宿落葉松林とりかこみ

山の避暑かはりがはりの泊り客

ここに又縁ある仏夏花折る

わが庭の牡丹の花の盛衰記

ひしひしと玻璃戸に灯虫湖の家

湖を断つ夏木の幹ただ太し

美人手を貸せばひかれて老涼し

短夜や夢も現も同じこと

人の世の今日は高野牡丹見る

短夜を旅の終りの朝寝かな

日除け作らせつつ書屋書に対す

何事も古りにけるかな古浴衣

見る人は如何にありとも古浴衣

金魚玉空しき後の月日かな

古道に出たり左右の夏木立

このまとゐ楽しきかなや蚊を追ひて

湖の今紺青に炎天下

避暑に来て一と日帰農の友を訪ふ

郭公も唯の鳥ぞと聞き馴れし