和歌と俳句

高浜虚子

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歴史悲し聞いては忘る老の

雑踏の中に草市立つらしき

大文字や人うろつける加茂堤

友を葬る老の残暑の汗を見る

病人に野分の夜を守りけり

句拾ふや芒ささやき露語る

一面にの江口の舞台かな

何某に扮して月に歩きをり

我静なれば蜻蛉来てとまる

紫蘇の実を鋏の鈴の鳴りて摘む

もの置けばそこに生れぬ秋の蔭

棟竝めて早稲田大学秋の空

秋風や心の中の幾山河

破れ傘さして遊ぶ子秋の雨

京に来て茸山あり手紙書く

山河ここに集り来り下り簗

つややかな竹の床几をに置く

夕闇の蘆荻音なく舟著きぬ

病床の人訪ふたびに秋深し