和歌と俳句

高浜虚子

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立秋の雲の動きのなつかしき

自転車に花や線香や墓参り

不思議やな汝が踊れば吾が泣く

日出でて葉末のの皆動く

雲間より稲妻の尾の現れぬ

秋雨を衝いて人来る山の庵

叢の中に傘干す山の庵

狼藉や芙蓉を折るは女の子

芙蓉花の折り取られゆく花あはれ

凄かりし月の団蔵七代目

よべの月よかりしけふの残暑かな

を待つ人皆ゆるく歩きをり

歌膝を組み直しけり蟲の宿

いつまでも用ある秋の渋団扇

いつの間に壁にかかりし帚草

取りもせぬ糸瓜垂らして書屋かな

木犀の香は秋の香を近づけず

北嵯峨の祭の人手見に行かん

秋晴や諸手重ねて打ち翳し

天高し雲行くままに我も行く

白雲の餅の如しや秋の天

あの雲の昃り来るべし秋の晴

渡り鳥堤の藪を木伝ひて

一塵を見つけし空や秋の晴

稲架遠く連り隠れ森のかげ

礎の下の豆菊這ひ出でて

木々紅葉せなばやまざる御法かな

今も尚承陽殿に紅葉見る

温泉に入りて暫しあたたか紅葉冷え

君を送り紅葉がくれに逍遥す

末枯の原をちこちの水たまり