和歌と俳句

高浜虚子

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あの音は如何なる音ぞ秋の立つ

袖垣に桔梗ついと出秋の立つ

銀河中天老の力をそれに得つ

昴明く銀河の暗きところあり

銀河西へ人は東へ流れ星

虚子一人銀河と共に西へ行く

西方の浄土は銀河落るところ

わが終り銀河の中に身を投げん

香煙に心を残し墓参り

伊予の日の暑しと思ふ墓参り

墓参して直ちに海に浮びけり

人生は陳腐なるかな走馬燈

老人の日課の如く走馬燈

ものの絵にあるげの庭の花芙蓉

朝顔の大輪にして重なりて

よき部屋の深き廂や萩の花

ひろひためたる栗を土産かな

伐出せし竹の太さや英勝寺

雲あれど無きが如くに秋日和

山川のくだくる水に秋の蝶

本尊に茶を供ずれば秋蚊出る

秋の波たたみたたみて火の国へ

海底に珊瑚花咲く鯊を釣る

桶に落つ秋水杓の廻り居り

秋風に木々の透間の見えそめし

秋雨や庭の帚目尚存す

稲筵あり飯の山あり昔今

稲筵つづきに伊予に這入りけり

温泉煙に絶えず揺れゐる烏瓜

巫女案内紅葉をくぐり橋を過ぎ

深耶馬にトラック二台紅葉狩