木犀や夕じめりたる石だたみ
濡れそむる蔓一すぢや鴉瓜
秋風や人なき道の草の丈
初秋や朝顔ひらく午さがり
芙蓉所々昌徳宮の月夜かな
秋立つや金剛山に雲も無し
八道の山は禿げたり今朝の秋
大いなる帽子野分に黒かりし
秋の日や榎の梢の片靡き
赤ときやいとど鳴きやむ屋根のうら
寝てゐれば夜長の畳匂ふかな
線香の束とかばやな桐一葉
振り返る路細そぼそと暮秋かな
鴉瓜赤らみそめぬ時雨れつつ
秋の日の道椎柴に入りにけり
日だまりに黍ほどろなる畠かな
星月夜山なみ低うなりにけり
雨に暮るる軒端の糸瓜ありやなし
茶の色も澄めば夜寒の一人かな
枝豆をうけとるものや渋団扇
線香を干したところへ桐一葉
唐黍やほどろと枯れし日のにほひ
朝顔や土に匍ひたる蔓のたけ
朝顔や鉢に余れる蔓の丈
草の家に柿十一のゆたかさよ