大旱の田に百姓の青不動
炎天の坂や怒を力とし
翼あるもの先んじて誘蛾燈
きりぎりす夜中の崖のさむけ立つ
わが家の蠅野に出でゆけり朝のパン
松の花粉吸ひて先生胡桃割る
鉄塊の疲れを白き蚊帳つつむ
山削る裸の唄に雷加はる
唄一節晩夏の蠅を家族とし
青葡萄つまむわが指と死者の指
眠おそろし急調の虫の唄
海坂に日照るやここに孤絶の茸
仕事重し高木々々と百舌鳥移り
雲厚し自信を持ちて案山子立つ
抱き寝る外の土中に芋太る
饅頭を夜霧が濡らす夜の通夜
坂上の芋屋を過ぎて脱落す
大枯野壁なす前に歯をうがつ
死後も貧し人なき通夜の柿とがる
孤児孤老手を打ち遊ぶ柿の種
冬の山虹に踏まれて彫深し
電柱も枯木の仲間低日射す
滅びざる土やぎらりと柿の種
寒き田へ馳くる地響牛と農夫