俳句案内

西東三鬼

十一

十二
十三
十四
十五
十六

大旱の田に百姓の青不動

炎天の坂や怒を力とし

翼あるもの先んじて誘蛾燈

きりぎりす夜中の崖のさむけ立つ

わが家の蠅野に出でゆけり朝のパン

松の花粉吸ひて先生胡桃割る

鉄塊の疲れを白き蚊帳つつむ

山削る裸の唄に雷加はる

唄一節晩夏の蠅を家族とし

青葡萄つまむわが指と死者の指

眠おそろし急調の虫の唄

海坂に日照るやここに孤絶の

仕事重し高木々々と百舌鳥移り

雲厚し自信を持ちて案山子立つ

抱き寝る外の土中に太る

饅頭を夜霧が濡らす夜の通夜

坂上の芋屋を過ぎて脱落す

枯野壁なす前に歯をうがつ

死後も貧し人なき通夜のとがる

孤児孤老手を打ち遊ぶ柿の種

冬の山虹に踏まれて彫深し

電柱も枯木の仲間低日射す

滅びざる土やぎらりと柿の種

寒き田へ馳くる地響牛と農夫

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