和歌と俳句

種田山頭火

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空も秋がきた地しばり草の花も

つくつくぼうしよ死ぬるばかりの私となつて

死ねる薬が身ぬちをめぐるつくつくぼうし

今が最後の、虫の声の遠ざかる

家があつて墓があつて草が青くて

草の中ゆく私の死のかげ

誰にあげよう糸瓜の水をとります

猿と人間と金網と炎天と

誰か来さうな糸瓜がぶらりと曇天

夕焼ふかく何かを待つてゐる

しぐれて遠くラヂオがうたひだした

つゆ草のさけばとて雨ふるふるさとは

誰もこないでちらちらするのは萱の穂で

ずんぶりと湯の中の手足いとほしや

質草一つ出したり入れたりして

また質入する時計ちくたく

蠅が打つ手のかげが秋風

めうがのこ それもふるさとの にほひをさぐる

おもひでのみち尾花墓場まで

ポプラに風も秋めいてきた坑木の堆積

ここにわたしが つくつくぼうしが いちにち

月のへちまの水がいつぱい

いつでも死ねる草の枯るるや