蚊の入りし病の蚊帳を吊りづめに
蟹照らすためにゆふ空焼けにけり
青蚊帳を静臥のときは城として
蟹の爪がりがり岩を滑り落つ
濡縁はあれど夏草身に迫る
蜑の子や沖に短かき一夜寝て
ゆあみして来てあぢさゐの前を過ぐ
蛍火の砂に落ちたる海の浜
童女また夏は疵して遊びけり
干梅のやはらかさ指触れねども
星天を夜干の梅になほ祈る
清水飲むつつがの胸の板濡らし
炎天の遠き帆やわがこころの帆
蝸牛渦の終りに点をうつ
たかんなの土出でてなほ鬱々と
桐の花電線二本過ぎゆくも
こころよく河鹿鳴く瀬に指涵す
俯向いて蟻は真暗き穴に没る
身を浸けて蟹が水飲むことあはれ
わが家よりキヤムプの為せることを見る
両眼を低くして蟹穴を出づ
炎天の犬や人なき方へ行く
夕焼の天の隅々うらがなし