和歌と俳句

原 石鼎

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礼者らし起ちて降りしは初電車

遣羽子や大戸卸して昼の町

初東風を高う揚げたる羽子に見し

読む歌留多月にあがりぬ路地の奥

読初の目に涙来て笑みにけり

読初の眼光すでに紙背かな

覚めぎはに何か初夢見しごとし

軒滴きよらにかゝりとぶさ松

鳥総松雪の底ひの土の中

松過ぎを来てこの人の春着かな

元朝のささなきしばししてやみぬ

元日やまばゆきまでに客座布団

元日の夕日もまこと荘厳に

元日もはや燈が見えて夕焼雲

初日人銀杏落葉を踏んで来る

初日の出護摩焚く天の一方に

初曇り羽根うつ音の日もすがら

初曇り雪曇りとも重なりぬ

そぞろ園に下りたつ屠蘇の主かな

金銀や屠蘇の銚子の蝶の髭

輪飾に壁をいたはる心かな

蓬莱に壁を尊む心かな

白壁を伝うてけふも嫁が君

餅花のしだるる中の小判かな

紅白の餅花なんど神さびて