人のごとく深夜鉄砲百合は立つ
万緑のわくがごとしや一犬吠ゆ
焼跡の葎の一つ風鈴鳴る
泥鰌汁名を得て人は遠くなる
虹立ちて亡き友の空傾きぬ
寂として万緑の中紙魚は食ふ
冷し馬目がほのぼのと人を見る
火の記憶牡丹をめぐる薄明に
汽罐車の胴体濡れてほととぎす
炎天へまひるの炎つつつつと
人の訃やただうちまくる蠅たたき
蜘蛛の子が湧くがごとくに親を棄つ
蟻地獄ただどん底に月さして
短夜の青嶺ばかりがのこりけり
炎天に犬尻ふりて欠伸せり
梅雨の月ありやとかざす掌に
芥子詠んで黄河を越えき芥子を見ず
蟻はしる地図の代赭はゴビの色
おそろしきまでに我に似て白絣
赤ん坊の掌の柔かさこがね虫
黴の中言葉となればもう古し
税吏汗し教師金なし笑ひあふ
緑蔭やXの根に眉あつめ
銀座西日頸たてて軍鶏はしるなり