和歌と俳句

竹下しづの女

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我を怒らしめこの月をまろからしめ

怒ることありて恚れりまどか

月まろし恚らざる可らずして怒り

嫁ぎゆく友羨しまずをむく

をむきて久遠の処女もおもしろし

紫の蕾より出づ銀の葦

かたくなに檪は黄葉肯ぜず

楢檪つひに黄葉をいそぎそむ

寒風と雀と昏るるおのがじし

寒雀風の簇にまじろがず

まつくらき部屋の障子に凭れ居し

八ツ手散る楽譜の音符散る如く

黒き瞳と深き眼窩に銀狐

の描く水尾の白線剛かつし

ペンだこに手袋被せてさりげなく

雪ふかき田家に火のみ赤く燃ゆ

赤光をつらねてくらし遠山火

山火炎ゆ乾坤の闇ゆるぎなく

山上憶良ぞ棲みし萌ゆ

萌ゆ憶良旅人に亦吾に

蓬摘む古址の詩を恋ひ人を恋ひ

万葉の男摘みけむ萌ゆ

木蓮に白磁の如き日あるのみ

ただならぬ世に待たれ居て卒業

新しき角帽の子に母富まず

月見草灯よりも白し蛾をさそふ