和歌と俳句

竹下しづの女

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茅萌え芝青み礎石にかしづける

茅に膝し巨き礎石の襞に触る

が鳴くゆゑ路が遠きなり

苺ジヤムつぶす過程にありつぶす

苺ジヤム甘し征夷の兄を想ふ

苺ジヤム男子はこれを食ふ可らず

蚊の声の中に思索の糸を獲し

苔の香のしるき清水を化粧室にひき

女人高邁芝青きゆゑ蟹紅く

階高く夏雲をたたずまはしむ

田草取に鏡の如き航空路

葦咲いて夏をあざむくゆふべあり

刈稲の泥にまみれし脛幼し

寒波来ぬ月光とみに尖りつつ

寒暴れの門司の海越え来し電話

片頬にひたと蒼海の藍と北風

埋火や今日の苦今日に得畢らず

かたくなに日記を買はぬ女なり

旅人も礎石もも降り昏るる

埋火に怒りを握るこぶしあり

宝庫番と暮れてまかるや初詣

ちりひぢの旅装かしこし初詣

初富士の金色に暮れたまひつつ

傷兵の白ければいや白く

散るにかざし白衣の腕なり