和歌と俳句

正岡子規

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板塀や梅の根岸の幾曲り

梅を見て野を見て行きぬ草加迄

根岸にて梅なき宿と尋ね来よ

何の木としらで芽を吹く垣根哉

大桜只一もとのさかり哉

観音の大悲の桜咲きにけり

夜桜や大雪洞の空うつり

石塔や一本桜散りかかる

人もなし花散る雨の館船

めらめらと落花燃けり大篝

紫の夕山つつじ家もなし

この岡に根芹つむ妹名のらさね

泥川を 生ひ隠すうれしさよ

石原やほちほち青き春の草

三十六宮荒れ尽して草芳しき

鷺下りて苗代時の寒哉

残り少なに余寒ももののなつかしき

鵲の人に糞する春日

春の日の暮れて野末に灯ともれり

石手寺へまはれば春の日暮れたり

何として春の夕をまぎらさん

春の夜や寄席の崩れの人通り

春の夜や奈良の町家の懸行燈

たれこめて已に三月二十日かな