和歌と俳句

正岡子規

舟歌のやんで物いふ夜寒かな

鶏頭の皆倒れたる野分

樽柿を握るところを写生哉

妹が庭や秋海棠とおしろいと

蕃椒広長舌をちぢめけり

画き習ふ秋海棠の絵具哉

人賤しく蘭の価を論じけり

筆談の客と主や蘭の花

鐘の音の輪をなして来る夜長

冬近き嵐に折れし鶏頭

冬を待つ用意かしこし四畳半

病間あり秋の小庭の記を作る

母と二人いもうとを待つ夜寒かな

痩骨をさする朝寒夜寒かな

病牀の財布も秋の錦かな

いもうとの帰り遅さよ五日月

こほろぎや物音絶えし台所

秋の蚊のよろよろと来て人を刺す

くふも今年ばかりと思ひけり

取付て松にも一つふくべかな

臥して見る秋海棠の木末かな

秋海棠に鋏をあてること勿れ

糸瓜さへ仏になるぞ後るるな

悪の利く女形なり唐辛子

驚くや夕顔落ちし夜半の音