なんばんのおのが葉風にさとき音
なんばんの葉の星明りかさといふ
なんばんの葉に照るほどの月ふとり
なんばんの月夜へ雨戸寝しづまる
ずずだまの穂にうすうすととほき雲
高黍の月夜となりて雲あまた
粟の穂のおのおの垂れて月明り
下げし灯に夜長の襖しまりたる
部屋のもの夜長の影をひとつづつ
ひとごゑをへだつ夜長の襖かな
めいめいの影の夜長のおのがじし
夜長さの障子の桟の影とあり
長き夜の影のあつまる部屋の隅
秋霖の音のをりをり白く降る
秋霖の音の畳の翳とあり
秋霖の襖の花鳥暗けれど
秋霖のいつかあたりとなくつつむ
夜長さの雨降る音のかはらざる
秋雨の障子かたひし鳴る中に
柿食うて燈下いささか悔に似し
秋燈のもとにて壁のかこむ中
ふりむいておのが夜長の影の壁