灯を籠めてさやかに青き簾かな
板塀の応ふ音佳し水を打つ
水打つて茗荷の花も濡れにけり
簷晴れてさやさや青き菖蒲かな
菖蒲湯やなみなみとしてあごの下
菖蒲湯を出てかんばしき女かな
初蚊帳のしみじみ青き逢瀬かな
たましひのさびしくいぶる蚊遣かな
わが好きの単衣つるせり寝ても見る
翩飜と羅を解く月の前
うすものの裾や吹かれて埒もなし
嵩もなう解かれて涼し一重帯
しら玉の雫を切つて盛りにけり
ところてん煙の如く沈み居り
瓜揉の酢の利き過ぎし月夜かな
漬茄子の一夜を惜む紫紺かな
鮓の香のほのかに寒し昼の閑
ちはやぶる神代の石や鮓の石
老鶯啼いて山行の餘情かな
かはせみや水つきかかるふくらはぎ
朝潮のさやさや青きくらげかな
月しろのにはか明りやほととぎす
苑日々に草深うなる鹿の子かな
月さすや金魚居らざる金魚鉢
夜の金魚静かに游ぐまくれなゐ