和歌と俳句

夏目漱石

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いつか溜る文殻結ふや暮の春

逝く春や庵主の留守の懸瓢

おくれたる一本桜憐れなり

逝く春やそぞろに捨てし草の庵

青柳の日に緑なり句を撰む

空に消ゆる鐸のひびきやの塔

はものの句にあり易し京の町

故郷を舞ひつつ出づる かな

御堂まで一里あまりのかな

ひたすらに石を除くれば春の水

浦の男に浅瀬問ひ居る

腸に滴るや粥の味

蝶去つて又蹲踞る小猫かな

鶏の尾を午頃吹くや春の風

行く春や壁にかたみの水彩画

琴作る桐の香や春の雨

人形も馬もうごかぬ長閑さ

は隣へ逃げて藪つづき

つれづれを琴にわびしや春の雨

欄干に倚れば下から乙鳥