和歌と俳句

夏目漱石

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

壁に達磨それも墨画の芒哉

壁に映る芭蕉夢かや戦ぐ音

湯壷から首丈出せば野菊

五六本なれど靡けばすすき

厳かに松明振り行くや星月夜

四五本の竹をあつめて月夜哉

葉鶏頭高さ五尺に育てけり

我一人行く野の末や秋の空

眠らざる夜半の灯や秋の雨

電燈を二燭に易へる夜寒かな

竹一本は四五枚に冬近し

菊の花硝子戸越に見ゆる哉

朝貌にまつはられてや芒の穂

棕梠竹や月に背いて影二本

秋となれば竹もかくなり俳諧師

まきを割るかはた祖を割るか秋の空

饅頭に礼拝すれば晴れて秋

饅頭は食つたと雁に言伝よ

瓢箪は鳴るか鳴らぬか秋の風

明けたかと思ふ夜長の月あかり

吾猫も虎にやならん秋の風

酔過ぎて新酒の色や虚子の顔

長からぬ命をなくや秋の蝉

ふつつかに生まれて の親子かな