家を出て師走の雨に合羽哉
何をつつき鴉あつまる冬の畠
降りやんで蜜柑まだらに雪の舟
この炭の喞つべき世をいぶるかな
温泉の門に師走の熟柿かな
温泉の山や蜜柑の山の南側
天草の後ろに寒き入日かな
日に映ずほうけし薄枯ながら
旅にして申訳なく暮るる年
凩の沖へとあるる筑紫潟
うき除夜を壁に向へば影法師
乾鮭のからついてゐる柱かな
兀として鳥居立ちけり冬木立
灰色の空低れかかる枯野哉
無提灯で枯野を通る寒哉
石標や残る一株の枯芒
枯芒北に向つて靡きけり
遠く見る枯野の中の烟かな
暗がりに雑巾を踏む寒哉
冬ざれや狢をつるす軒の下
凩や岩に取りつく羅漢路
巌窟の羅漢どもこそ寒からめ
釣鐘に雲氷るべく山高し
凩の鐘楼危ふし巌の角
梯して上る大磐石の氷かな