和歌と俳句

橋本多佳子

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冬兎身の大の穴いくつも掘り

もがり笛厚扉厚壁くぐり来る

亡き夫顕つごと焚火あたたかし

泣きじやくる神楽おかめの笑ひ面

除夜の鐘大切なこの歳を病み

火を恋ふは焔恋ふなり落葉焚き

猟銃音わが山何を失ひし

つよき香の雉子食ふいのち延ばすとて

暮れ土に雉子の羽毛の一羽分

またたくは燃え尽きる燭凍神将

少年の冒険獲もの一氷片

氷塊の深部の傷が日を反す

寒燈を当つ神将の咽喉ぼとけ

なんといふ暗さ万燈顧る

万燈会廻套利玄とすれちがふ

入院車ゆきて深々

はげし化粧はむとする真顔して

雪映えの髪梳くいのちいのりつつ

の日の浴身一指一趾愛し

はげし書き遺すこと何ぞ多き