和歌と俳句

吉岡禅寺洞

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温風や落ちてちひさき青柑子

蠅叩一日うせてゐたりけり

一冊の江戸絵帖ありの宿

夕風にさやぎいでたる茅の輪かな

衣更へて庭に机にある日かな

黒ばえに山かつの井をのぞきけり

ぬぎ合へる夕べの笠や早苗とり

誘蛾燈とぼしきマッチすりにけり

火の山をつりかくしたる簾かな

泉殿西日となりて下りにけり

毛虫やく火を柿の葉にもてあそぶ

毛虫やく人ゐて園生すたれけり

三伏の夕べの星のともりけり

かたむけて西日の笊の干飯かな

またたきのさびしくかめる干飯かな

遊船のへさきにありぬ西の月

夕凪や垂乳あらはにゆきかへる

ははきぎに夜の秋なる径はあり

をちの灯のさしてゐるなり五月川

杜鵑花折る昆虫とりの一学徒

蓮池に昆虫網をうつし過ぎぐ

藺の畦を昆虫とりのかへし来る

南風のみち昆虫とりもしらぬとて

緑蔭や昆虫とりの葉巻のむ