内緒の話・2
吐かれる息が熱くって、その分、俺のこれにも、熱が篭っていく気がする。
震えるまつ毛、震える唇、揺れる前髪。キレーな人が今、腕の中に居るのに。
「どーしてガキかな、俺……」
してしまいたい。自分のものに、自分だけのものに。心からそう言うと彼は苦しい呼吸を告ぎながら薄く目を開け、微笑んだ。
「馬鹿……」
「だってさぁ、同じクラスのヤツでもう、出たの居るんだぜ。俺の方が背も高いし、誕生日も早いのに」
「そんなの、個人差、だ。心配しなくても、お前だって、スグだよ」
「アニキいつだった?」
「俺?俺は……、どうだったかな。忘れたよ」
触りあって、もみ合って、舐めあって。シーツの下でそういう遊びをするようになって半年。
最初は嫌がって苦しんで泣いていた人がゆっくりほどけてきた。身体も気持ちも、表情も。今ではしながら、時々は笑う。キスを何度も繰り返す。優しい笑顔につけこむ形で、
「なぁ、試していい?」
耳元に囁く。仕方なさ層に彼は起き上がり、俺の股間に顔を伏せる。邪魔になる前髪を手で掻き上げて。真っ黒な髪の間から真っ白な指が覗く。俺のを、咥えようとしてくれた顎を掴んで、
「……?」
不思議そうに見上げる目元にキスした。そのまま肩を押して仰向けに寝せる。腰を跨ぐように乗り上げて胸元に帰すすると、
「……ん、もーダメってば」
押しのけようと軽く足掻く。押し戻す以上の力で彼の手をシーツに貼り付け、
「なに……」
本気で抵抗される前に自分の指を濡らして、イれた。
「啓……ッ」
叫ばれる。悲鳴だった。
「ヤ、ナニ……ッ」
ごめんと心で思いながら指を根元まで強引に、いれた。彼はもう、声も出せないみたいだった。
「ゴメン。イタイ?」
尋ねるとようやく呼吸を思い出して、
「……や」
唇がたよりなくわななく。奥に赤い舌がのぞく。ゾクッと、した。
キスしたかったけど我慢して、指を動かす。潤んだ目から雫をこぼしながら。彼はかぶりをふり続ける。指で探る彼のナカはひどく柔らかかった。すごく。すごい。気持ちが、良さそう。
「ケー、スケッ」
「いれさして」
「ヤ……」
「ここ、使うんだってさ」
「だって、お前、まだ……」
「ん。……大丈夫、と思う」
予感はあるのだ。彼のとすりあわせると硬くなる、その時のムズムズする感じがどんどん増してきて、目の前が揺れる感じ。
そこを使うって知ったときはちょっとびっくりした。けど触ってみるとすっごくイイ。感触もいいし、イれると彼がピクリとも身動きできない感じで息も浅く、泣きそうなトコロが、イイ。
指を動かす。足指をぴくぴく突っ張らせて、
「ヤ……ッ」
彼の身体が左右に揺れる。
「イヤ、やめ……、け……ッ」
泣き言には耳を貸さなかった。
指をもう一本、突っ込んでさらに奥を探る。はりつくような悲鳴が上がる。
……俺は、ちょっとおかしくなっていた。
アニキのことが大好きで、アニキにも俺のこともっと好きになって欲しい。なのになんだか、ヘンな感じなんだ。
アニキが苦しそうに泣いてる。可哀相、なんだけど、もっと違う感じの方が強い。もっと泣かせて、もっと苛めて、もっと縋りつかせたい。
指を無茶苦茶に動かすとアニキは、びくびく、身体を揺らめかす。真っ赤な乳首が可愛くって、俺は身体を傾けてそれを舐めた。
アニキの腕が伸びてきて、てっきり押しのけられると思ったら逆だった。きつく抱きとめられる。震える指には、思いがけない力が篭っていた。もっと、という風に胸を押し付けられて、嬉しかったから歯をたててあげた。
「イヤ……、イヤァ……」
言葉と裏腹に声は甘い。そうして俺を抱く腕は緩まない。……かわいい。反対側も舐めてあげて齧ると、
「あァ……、ンッ」
触ってもいない彼の中心がはじけた。俺の腹に当たって散る。片方の指を抜いてそれを拭って、集めて、彼のなかに塗りつける。にゅちゃっと、粘つく音がした。
「あん……、あ・あ……」
「キモチいい?」
「……ン」
彼はトロンととろけて、柔らかかった。もうイヤともイタイとも言わなかった。俺がナカで指を動かすのにあわせて腰を跳ねさせる。俺に抱きつきながら。
「……っても、イイ?」
問いかけの意味を多分、彼は分かっていなかった。
「ウン……」
拒む言葉を忘れたように頷く。
「イれるよ……」
さっきからカタくにってむずむずしてしょーがない自分のを、入れる。指に添わせて、彼のナカに。なにされようとしているか、彼は最初、よく分からないみたいだった。けど俺の、の先端がツプッて音たてて入った途端、
「ア……ッ、え」
それは指より相当に、太い。そして比べ物にならないくらい、熱い。
「ケ、スケ、ナニ……」
「オレ」
「ヤ……、アツッ」
「うん。アニキんナカも、すげェ……」
熱いよ、とは続けられない。やけつくようなそこに夢中になった。じゅく、じゅくと湿った音がする。柔らかく、でもキツく絡み付いてくる彼の、ナカが、ものすごくキモチ、いい……。
「抜いて、ぬいてケースケッ」
「ダメ」
答えながら息がすっごく荒くなる。血が、繋がったそこから脳みそに逆流してくるみたい。
「お願い、ケースケ。苦し、苦しい、ケースケッ」
「ん……」
「たすけ、も、ヤメ……」
「……」
動かす。
「ヒ……ッ」
彼の叫びを聞きながら、でも、叫びたいのは俺の方だった。ナニ、これって言いたいのも。
なに、これ。なぁ、コレってなに?
キモチイイなんてモンじゃない。火花がバリバリ、そこから散ってるような感覚。繋がった場所から溶けて、混じって、抱き締める体がそのまんま、俺自身になる、みたいな。アニキの叫びも悲鳴も泣き声も聞こえなくなって、ただひたすらに彼のナカで、動いた。
これが犯すってことなら、こうすることが抱くって言葉の意味ならオレは、ずっと、アニキを犯して抱き続けていたいと、思った。
とけたって、思った。
俺の、アレがアニキの中で。
それくらい熱くて、ヨかった。火花が散る感覚を何度も繰り返して、べたべたになった中から抜いたとき、糸が切れた人形みたいにアニキの身体はシーツの上に伸びる。
俺が抜け出たトコロからオレが吐き出したモノと、アニキのを塗りつけたのが混ざって流れ出す。とろん、としたそれは薄紅色をしていた。中が擦れて、血が滲んでるのだ。
「……」
俺も彼も、何も言わなかった。彼は震える手でシーツを引き寄せて、俺から身体を隠した。恐い夢から逃れるときみたいに。
だるい身体をムリに起して、俺はベッドから降りた。パンツだけはいて、タオルを絞って持ってくる。それともう一つ。
「アニキ」
声をかけると彼はびくっと身体を竦めた。
「こっち向いて。拭くから。気持ち悪いだろ?」
なぁ、と優しく言ってシーツに手を掛ける。スルッと剥いでも抵抗はされなかった。恐がって泣きそうな顔をしただけ。舐められたり齧られたり腹の間で擦られたりした彼が赤くはれた。俺に花火を散らした場所も。濡れた布で拭って、それでもなんか残ってる気がして舐めようとしたら、
「……いい」
あげた踵で狭間を隠される。
そこはそのまま、伸び上がり、代わりに顔を隠した肘をはがす。彼の目を見た。苛められた女の子みたいな目をしてた。それなのに、
「オメデトウ」
ムリして笑うから表情が、歪む。でもその歪み方まできれーで、手のつけようがないカンジ。
「ん……
」答えず彼の身体にもう一度、乗った。拒もうとはされなかった。そんな力は残っていないみたいだった。俺は彼の、そんな痛みにつけこんだ。
「ヒ……ッ」
予想していなかった痛みに彼はびくりと、軋む身体を痙攣させ、睫の翳りの濃い瞳を見開く。俺はでも、その手を止めはしなかった。彼のナカにクリームを塗ったドライバーの取っ手を押し込んで、揺らす。
「ケースケ、ヤメ……」
「女の子になって」
「ヤメ……、ッ、イタ、イタイッ」
「ここに俺いれて、キモチイイようになって」
「ケースケ、イタ……、イ」
「好きだよ」
泣かれて、縋られて、何度もキスをされたけど、俺はそれを彼から抜かなかった。泣きながら痛がりながら疲れきって、彼は失神同然に眠った。
「スキだよ」
離さない。二度と、絶対。