TSexFive

 

 

「見送りはいい」

 言ってみたが答えはない。まぁ最初から期待はしてなかった。

 疲れてろくな反応もしなくなったロイを、金髪の若い男がまだ弄りまわしてる。まぁ、気持ちは分からないじゃない。最後に滴る蜜は恐ろしく甘い。抵抗を諦めて、刺激を楽な快楽として受け入れて、それでも赦されないと自分から深い淵におちる。あれが演技か、心からの悶えか、俺には結局、分からないままだった。

「……ちょっと、退け」

 昔を思い出して甘い気分になって、濡れた音をたてる若い男を押し遣る。抵抗の気配はあったが大人しく引いた。俺がもう外に出て行くのが分かってて、さっさと追い出そうとしてる、これは案外、計算を知ってる頭のいいヤツ。

「ロイ」

 呼ぶと目を開けた。でも多分、俺が誰かは分かってないだろう。

 と、思ったら、

「……、ズ……」

 おや。

 細い、でも聞き覚えのある声。

 眠りたくて安らぎたくて、どう仕様もなくなるとお前はこういう声を出す。眠りたいのか?

 唇を重ねる。味は少し苦い。端が切れて血の匂いがする。あぁでもそれより、お前の匂いが甘ったるくて懐かしい。こう言うお前を抱いて眠るのが好きだった。いい夢がみれた。

 柔らかく舐めてから唇を重ねる。可哀想な舌は怯えて奥で竦んでる。苛められたな。でも仕方ないだろう、お前が悪い。

 おいたが、過ぎるぜ。

 あんなガキ相手に。

 反省したか?後悔したか?もう二度としないな?

 悔悛を俺に誓え。そしたら許してやる。

 基本的に、俺はお前には甘い。

 優しく撫でてやってると安心したのか、身体から力を抜いて目を閉じて、肩を寄せ懐くような仕草。

 ロイ。お前は、計算が過ぎる。

 無意識だからこそ憎い。

「……、ろ」

 ん?

「棄てろ……、ル、ム……」

 後でな。用が終わったら、すぐ返してやる。

「……ヒュ、ズ……っ」

 お前はもーちょっとそいつに苛められてろ。俺がどうしても嫌だって泣くから呼んだ金髪だ。お前は俺には昔からわりと正直だったが、あんな風に泣いたのは初めてだった。お前に嫌がられるのは切ないな。泣きたかったのは俺の方だ。

「ヒューズッ」

 ロイ。いい加減、懲りろ。

 お前がそんな声出すたびに、俺の気がたってく。外葉爽やかな朝で、俺は風呂に入って髪も上げて、なのに気分はまだ夜半。俺をここまでぐちゃぐちゃにしておいて、お前は。

「……イヤだ……ッ」

 しらっとしたツラしやがって、何してた、俺が知らない所で。

「ハボ、やめ……、イタイ、もぉ……、ッた……」

 罰だ。せいぜい、腹のすいた狗にでも、喰いつかれてろ。

 あんなガキよりはマシだ。

 

 

 

 大丈夫なのかな。そう思いながら触れた。

 心配しながら手を伸ばす、俺の動揺をあざ笑うみたいに、白い身体は慣れててしたたかだった。多分俺より、ずっと。

「いやだ、いやだ、いや、だ……ッ」

 拒みながら、でもヨがってイってくれて、俺も何度も何度も、絞られた。

「ひっくり返してみろよ、今度は」

 時々、枕もとからそんな声がして。

「背中からも、悦ぶ」

 ンなこと、どーして、知ってんですか、なんて。

 分かりきってる質問はしないでおいたけど。

「顔が見れなくなるけどな、前いじってやれるから」

 やってみるとその通りで、大佐は震えながら鳴いた。そういう人ってことは知ってた。鋼の大将とのディープなキスを見たから。女みたいに、男に抱かれてんのか。女を抱くみたいに、この人を抱けるんなら。

 ……抱いてみたいな、って。

 それは前から思ってた。けど。

 こんな形でのつもりじゃなかった。俺は部下で、なによりも今夜は警護の当番で、大佐に助けろって言われりゃもちろん、危害を加えようとしてる男を排除、しなきゃならない。

 けど。

「されたがってんだ、こいつは」

 中佐の言葉は嘘ではなくて。

「でも俺はイヤだとさ。結婚してるオトコはどうしても、好みじゃないそうだ」

 中佐の指を噛まされて喋れないように見えた。けど本当は自分から舐めてた。押さえつけられてるようにも見えた。けど本当は、テ脚を拡げて悶え狂ってた。

「……ッ」

 涙目で、潤んだ瞳が否定するように俺を見ても、欲望は正直だ。誤魔化しようなく。

「お前、代わりに抱いてやれ。偉い連中のセックスの相手も側近の役目だろ。時と場合によっちゃ」

「……、う……、う……ッ」

 嫌がる素振りで身体を捩っても、上気した肌が醒める筈もなくて。

「なぁ。あんなガキに手ぇ出すのは、犯罪なんだぜ、ロイ。道徳じゃなくて司法上の罪だ。おまけにお前は、保護義務のある立場だ。罪は加算される」

 教師や警察、上官や尊属、そういった立場が社会的弱者、つまり、女性や子供や老人や部下に、犯した罪は重く罰せられる。鋼の錬金術師が、どう間違っても『社会的弱者』じゃないことは措いて、法的に『子供』な歳の、あれに手を、この人が出すのは、ヤバイ。

「そんなに寂しいんなら、慰めてやるさ」

 あぁ、そうか。

 大佐、寂しかったんだ。

 言ってくれれば良かったのに。いいや、気付かなかった、俺が悪いですね。そう、まさか、あんな子供と本気で恋愛とか、している筈がない。

 遊ぶなら、俺とにしましょうよ。

 そうして意識は、最初に戻る。気持ちをマーブル模様が塗りつぶす。二人がかりで散々に可愛がると、慣れたカラダは本当に刺激を欲しがって疼いて震え出した。俺は大佐を抱いた。女の子をそうするみたいに。

 男の脚を方に担ぐのは初めてだった。でもナンの傷害もなく、すらすら、出来た。横に慣れてる人が居て、俺にイチイチ、教えてくれたから。挿入の手順も角度もタイミングも、そうしながらどうすれば、大佐が一緒にゆれ出してくれるかも。

 食いついて、初めて自分が、本当は飢え切っていたんだったて、知った。

 腹がいっぱいになるまで食った。俺に抱かれて『食われて』る大佐も、お約束の逃げる真似しながら、でも、のたうちながら、俺を美味そうに食ってくれたから。

 安心して、貪った。