近過ぎて癒着してしまった互いの傷口。

どうせなら一卵性の様に同じもので構成されているほうがよかった。

其れなら拒絶反応だって起こらないだろうに。

 

折角抱き合って温めた肌の温度が御互いに吐いた溜息で冷えてしまった。計った様にじりじりと水銀柱が下降して行くのが手に取る様に解る。

足掻きたくって手を差伸べても意を解せずに草臥れたリンネルで躰を柔かく包まれた。

「……けいすけ」

違う、と名を呼んでも曖昧に笑んで簡単な口付けでしか答を返さない卑怯に、仕返をする事の出来ない自分が忌々しくても、こう、しなくてはいられない。

嫋娜と厭魅を含んだ唇で声にならない望みを告げ、融け切った熱で僅かに開いた両脚の狭間で誘惑する。

「…け、すけ……」

精一杯、摑まえたなら逃さない、退路を直に絶てる狭さで。

追込んで追込まれて。

夢中になった其時の熱さの儘二人、凝固し果てて。

閉じ込めてあげたい、恌い、けれど硬く破れない殻の中に。

大事に大事に。

 

 

狂気に踊った後の汗は皮膚のみならず思考の表皮をも冷す、僅かに残った理性の手先であって。

探合って確めた熱さが重くて、遣瀬無さというモノに気管を詰らせた様に苦しい。

絳い脣吻に口付ければ、肺の呼気迄全て吸い尽されそう。精気を奪う魔性の嫋やかさで武装した、其強さの前には逃げるが上策。

何處迄何時迄、引いていられるか、そんな先の事は解らない。

其共肉躰交渉の時点から、もう引く事は出来ないのであろうか。

全ては幼い多分の興味本位の戀情と温もりを欲した動物的本能の命じる儘に手を伸ばした結果。

温かさが欲しかったのか、抱込まれ包まれる熱さには慣れる事が出来ない。

此の高温に取込まれてしまったら固まってしまうだろう。型に入れられ造られる青銅器の様に。

「…おやすみ、アニキ」

淡く笑んで熱くなる前に一歩下がる。

粘着質の羊水に溺れる事を回避する為に。

 

外科手術のメスでも切裂けない部位で癒着した傷口。

痛みすら感じない様に毒で痺れさせられ、他人に見せれば手遅れを宣告されそうで頑なに隠す一方。

母の腹から、二度に分かれて産まれたかいも、無い。