つららの行方
彼の眠りは、とても、とても深い。
知っていたから氷の塊を軒から折って、ペアガラスの窓を閉める。暖かな室内に氷は途端に潤んで汗をかく。ぬらつくそれを片手にもてあそびながら、俺は彼の眠るベッドに歩み寄る。
「……」
死体みたいに彼は眠ってる。寝顔は安らかで寝息は規則正しい。そっと毛布を剥ぐと彼の、白いパジャマの胸元が緩く上下してる。
その胸に顔を寄せた。
すべらかなシルクのパジャマはモチロン、俺からのプレゼント。終わった後で抱き締めて眠るとき、これを着ててもらうのがスキ。ホントは素肌の、素裸の彼を抱き締めて眠りたいけど、貴重な睡眠時間を効率的に利用したい彼は着心地のいいパジャマをきっちり、着こんで眠る。だからまぁ、シルクのパジャマは、俺からの妥協だったのだ。
そう。
妥協、けっこう、しているつもり。
だって愛してるから。昨日もちゃんと眠らせてやった。
……のに。
あんた、冷たすぎるよ。薄情にもほどがある。
……だから。
するのだと自分に言い訳を、しながら口元が緩むのは止められない。俺はすけべた文句があるか。男がえっちぃくなくなったら、そっちの方が、病気ダロ?
パジャマの胸元を開ける。カワイイ桜色の突起が白い肌に二箇所、じっとして俺を待ってる。
そこに唇を、落とす。そのくらいじゃこの人は目覚めない。交互に舐めて、指で弄ってる、うちにぴくんと、身体は浮いたけど。
淡い色合いが血の赤に近づくまで、こりこりに尖ってくるまで弄って、それから下へ滑ってく。パジャマのズボンと下着をするっと脱がせる。女と違って腰の張り出しの殆どない身体が妙に、愛しい。
髪の毛より、ちょっとクセの強いくさむらが、現れる。
そこに隠れて、彼自身も。
俺は……、つららを口に含んだ。
口の中が冷たくなる。
そのまま、眠ってる、彼を……。
「……、んっ、け……、っ、ヤメ……ッ」
びくんと跳ねる腰を押さえつけて。
「んー、ンッ……、なぁ、も……、ンッ……、ァ、アーッ」
昨今になく、素直に鳴く人を抱き締める。ダイスキな人の、下肢を。
抱え込むように拡げて。
狭間を、俺からは隠させない。
「……り、ヤメ……、こぉ、り……、抜いて、クレ……、ぇ」
一個じゃもちろん、ここまでよがりなきゃ、しない。
身体をよじらせて必死に、押し出した塊が彼の、淫猥な場所から細い先端を覗かせる。はぁはぁ、喘いで彼が、屈辱に震えながらそれを体内から、押し出そうとする。
「……ン……ッ」
いい眺めだった。視姦しながら、たっぷり堪能する。
「見る、な……」
そんなの、ムリだよ。すげぇイイ。とけた水が、まるであんたの蜜みたい。
「……、は、」
ようやくぽとり、吐き出せてほっとした、人が顔を腕で隠して横向く。
好きにさせて、俺は、新しいつららを折り取るためにベッドから立上った。
上がろうと、した。
「ダメ……、いや、ぁ……」
気配で察した彼がむしゃぶりついてくる。俺を、行かせまいと、阻む。
「行くな。もぅ、ヤ……。冷たいの、イヤ……」
しどけなく開かれた膝の狭間で、彼のも真っ赤に充血して腫れたようになっる。俺がしゃぶりまくったせいだし、つららを散々、先っぽに押し付けたせいでもある。
口ン中で、溶かして尖らせたつららのはしを、彼のの、先端の窪みに押し付けて。
モチロン、ちょっとしか入らなかったけど。
深さも、時間も。
それでも彼は呻吟してうめいた。……ナンか、予想外に、効く……。
「冷たいの、もぅヤだ……、あっためて……」
涙ながらの、懇願。
「……、っためて、クレ……」
そろそろ潮時かと、俺は彼を、シーツの上に、うつ伏せに押し伏せる。
「……ンッ」
自分から、俺の熱を求めて腰をあげた人に。
「ハシタナイ、ぜ……?」
わざとそんな、死語をぶつけてみると。
「……シテ、くれ……。サムイ……」
泣きながら、彼は揺らした。……俺を誘って。