ある日のうさ日記・うさうさの旅立ち

 

 

 コロン……。ポテン。

 お天気のいい昼下がり。うさはお庭で、コロロロロ。

 さよなら、しているんでしの。

 うさ、みんなと暫くは、お別れ。

 しょーがないん、でし。ハンサムしゃんに続いてにぃにぃも、おちごとで、他所のお国に、行くの。

 うさも、ついて、行くの。

 サクラしゃん、イチジクしゃん、リンゴしゃん、みかんしゃん、木蓮しゃん、楠しゃん。

 さよなら、暫くは、さようなら、ネ。

 近所の業者のシトが見回りに来てくりるし、清二しゃんが、堆肥とかのお世話はちてくりるけど。

 そりでも、元気でね。身体に気をつけてネ。

 うさうさが戻って来るまで、ちゃんと枯れないで待っててネ。

 しゃよう、なりゃ、なの……。

 

 しょんなこと、しているうちに、うさうさは発見!

 にぃにぃに、言いに行かなきゃ。にぃにぃ〜!

 

 お家のお玄関の片隅には、水の入ったちっちゃいバッドと、バスタオルが置いてありましの。

 うさ、お庭から上がるときは、バッドのお水にお足をちゃぷちゃぷちて、タオルで拭いて、にぃにぃ〜!

 にぃにぃは、さっき来たたぬたぬ・ふーみんと、なんか向き合って黙り込んでまし。

 ねぇ、にぃにぃ〜!

「ん?どうした、うさぎ?」

 こっち来て、来て、にぃにぃ!

「ギャー!」

 うさがにぃにぃをお庭に引っ張って行こうとちたら、ふーみんが、絶叫。

……ナンでしの?

「どうした、史浩」

「ムシ、虫がぁ〜ツ!」

 あ・この、うさのおせなの、ケムシしゃん?

 ケムシのけむ君、でしの。さーちゃんがスキスキなの。触りたいんでしの?はい。

「ぎゃあー!」

「うるさい、史浩。……で、なんだ、うさぎ?」

 こっち、こっちぃー!

 うさは、にぃにぃを引っ張って、お庭へ。

 

 お庭には、紫陽花が咲いてまし。

 一方は赤。もう一方は、青。違うお色に咲かせるために、片方の根元にだけ、清二しゃんが石灰を撒いたり、ちてたお蔭で、とってもいいお色〜。

 しょの上に、ほりゃ!

「あぁ、蛙だな」

 しょうなの。アマガエルしゃん。

 いちばんおっきく、咲いた青色の紫陽花しゃんの、上に、居るの。

 アマガエルしゃんも、キレイなお花が好きでしの。

 んでね。きっと、にぃにぃに、「さようなら」言いに出て来たの〜。

 みぃんな、にぃにぃを、すきすき、なのぉ〜。

「……うさぎ……」

 ネ?

「………………うさぎ……」

 あひゅん!

 にぃにぃに、ぎゅって抱っこ、さりまちた。てへへ♪

「史浩」

「なな、……ナンだ?」

 まだ腰の引けたふーみんが、ヤなヨカン、ってお顔。

「やっぱり、ダメだ」

「我儘を言うな、涼介」

「俺には出来ない」

「仕方ないだろう。うさぎにもそのつもりで、予防注射もさせただろ」

「この子を貨物扱いなんて、出来ない」

「東京中、捜して一番、いい業者を選んだんだぞ?大丈夫だ。ヌードマウスの一匹も殺さずに輸出入、してるペット業者だ」

「そんなネズミと一緒にするな」

「げっ歯類じゃないか。マウスの何倍も、うさぎは頑丈だろ」

「そんな箱に、この子を入れるつもりなのかお前。ヒトデナシめ」

「……あのな……」

 ふーみんが、もってるのは、硬化ダンボールの、お箱。

 中にはチップが詰めてありましの。

 うさ、ありに入って、お荷物で、送られるの。

 お弁当も、ちゃんと入れてあるの。お水は業者のシトが、飲ませてくりるんだって。

 ちょっと不安、だけど頑張るの。大丈夫、にぃにぃ。たぬたぬしゃんを困らせないで。うさ、いつまでも、ドコでもにぃにぃの、お膝に居ましのよ。

 しょのタメなら、我慢しゅるから、にぃにぃ。うさを、ちゃんと連れて行って、ネ?

「この子に何かあったら俺は立ち直れないぞ、史浩」

「大袈裟なことを言うな、涼介」

「啓介もきっとそうだ。あいつが今期、稼ぎそこねてもいいのか?」

「……おい」

「ほかの手段を考えろ。そんな箱に、入れるのは、ダメだ」

「いいからほら、渡せ」

 たぬたぬしゃんが、オテテをうさに、伸ばしまし。

 うさを抱っこ、ちていたにぃにぃが、いきなり。

 すっくと、立ち上がり、まちた。

「史浩」

 きゃう、にぃにぃ、お声が、違いましぃ〜!

「他の手段を考えろ」

 厳しいお声のにぃにぃも、しゅてきぃ〜。

「…………」

 たぬたぬしゃんは、たぬのチンモク。

 ……ゴメンね、たぬしゃん。

 にぃにぃは、こういうおシト、なの。

 ご苦労かけましけど、許してネ。

 

 

 そちて、二日後。

 成田空港、にて。

 うさは、籐のバスケットの中で、大人しくしてまし。

 編みが荒くって、隙間からは、お外が見えましの。何席か離れた場所に座るにぃにぃも。

 ……にぃにぃ。

 お……、しゅて、きぃ……。

 ハンサムしゃんの黒のおスーツの、下には銀色のシャツを着て、シャツの裾を出して着崩して、なんか、マフィアのおシトみたい。

 超美形!なお顔をわじゃと、サングラスで隠してぇ〜!

 お行儀悪く長いアンヨを高々と組んで、あっしを前に放り出してまし。お腕を席の背もたれに掛けて。

 崩れた感じのおイロケが、しゅてきぃ〜!

 みぃんな集まってきて、見てましい〜!

 やっぱり、うさのにぃにぃは、世界一ぃ〜!

「あれはみんな、呆れているんだぞ?」

 たぬたぬしゃんが、小声でうさに教えてくりました。

 しょうなの?ホント?でもほりゃ、あのお嬢しゃんたち、ほっぺが赤い、でしぃのよ?

「……世間が、俺には、分からん……」

 ぼそり、呟くたぬたぬしゃんは、やつれてまし。お気の毒。

 ……あり?

 にぃにぃが、お胸元から、タバコを取り出しまちた。

 ふだんは吸わないのに。そりにここ、禁煙席でしよ?

「お客様」

 空港の警備員、しゃんが飛んで来て。

「こちらは禁煙です。喫煙ブースは、あちらになっています」

「……」

 言われてにぃにぃは、流し目。サングラスごしの目線に、警備員しゃんはくりゃくりゃ〜。

 無言で、にぃにぃは立ち上がって喫煙ブースへ。みんなの視線がにぃにぃを追いかけまし。

 さりげなく集まってきていた警備員しゃんたちも、にぃにぃの方を、ちぅもく。

 たぬたぬしゃんがトイレに立っても、誰も気にしましぇん。

 おトイレの、個室でうさは、バスケットから出まちた。

 しょんでね、たぬたぬしゃんの、シャッツの中に、もぞもぞぉ〜。

「苦しくないか?」

 ううん。全然、大丈夫。

 ノープロブレム、でしよ。たぬたぬしゃんこそ、重くないでし?

「はは、うさぎが重いって思うほど華奢じゃないよ」

 マアネ。うさうさは、片手で持ち上げられるうさぎでしけど。

 けど、けっこう、たぬたぬしゃんって、……意外と……。

 カタイでしね。うさ、てっきりお腹、ぽよんぽよんかと思いまちたけど、しょんなことないでし。

 京ちゃんやハンサムしゃんとは比べられないでしけど、ぽんぽん、硬いでし。筋肉だった、でしのね。

「暫く動くなよ?」

 はぁい、分かりまちた。

 接触確認しゃれないように、たぬたぬしゃんは腕時計まで外してバッグの中へ。

 そうして、搭乗ゲートに向かいましの。そんたぬしゃんの、後にぴたりと、にぃにぃ。

 警備員、しゃんたちに緊張が走りましぃ。

 みんな、にぃにぃに注目。

 お人よし系の、ぽてぽての、金属探知機をくぐっても、何の気配もしなかったたぬたぬしゃんは、スルー。

 後で、お派手な音が、ちまちた。……にぃにぃ、でし。

「お客様、失礼ですが……」

 金属は外してって、言われてにぃにぃが、シャツのちたからじゃらっと、金鎖を外しまちた。

 ふっといそりは、勿論、ハンサムしゃんの、でし。

 も一回、探知機をくぐりマシ。また、ビーッ。

 今度は、ごつい腕時計。

 んでも、また、ビーッ!

 接触確認が始まってまし。

 そりを尻目に、たぬしゃんは持ち込み荷物を受け取って。

 うさと一緒に、しゃっしゃと、飛行機へ〜。

 

「うさぎ」

 飛行機の、お席は狭い、えこのみぃ。

 後のお席だかりゃ、スッチーしゃんも、あんまり来ましぇんの。

 呼ばれてうさうさは、ボタンの外されたたぬたぬしゃんの、シャツの隙間からお顔を出しまちた。ぽてん。

「大丈夫か?」

 うん。うさはヘイキ。元気一杯、でしぃのよ〜!

「さぁ、飛び立つよ」

 にぃにぃ、嬉しそう。

 もうすぐ、ハンサムしゃんと、会えましネ!

 

 飛行機がゆっくり、動いていきましの。

 お見送り、ちたアレの中に今、うさは居ましぃの、ネ!

 滑走路に入って、加速して、ゴゥ!

 ふぇわり、浮くのが、分かりまし。

 うさうさは、ふーみんのオテテに支えられて、お窓から、お外を見まちた。

 ぐんぐん、お空に上がっていきましよ!うわぁ……。

 

 今、うさは、お空を飛んでいましぃのーッ!

 

 マッテテネ、ハンサムしゃん!

 今すぐ、にぃにぃと、ハンサムしゃんの、処へ行きましから、ネ!

 

 

 

 

 ある日ある時・うさうさとたぬたぬの犯罪