うさうさ物語・うさうさの心配
……ずずる、ズルズル……。
ふぅ。ちっと休憩。疲れマチタ。
歩道の端っこにお座りちていると、ころんなおシトが、うさの前を通りまし。
うさ、商店街の、行き交うおシトを眺めているの、スキスキ、でしの。
いろんなお洋服の、いろんな髪型の、シトたちが歩いて行きまし。
その中でも、文太パパの御豆腐をよく買ってくりるシトはうさを知ってて、お声をかけてくりまし。うさ、おちっぽ、フリフリでお返事。しゃて。
元気を出して、もう一度ぉ〜。
ズルズル、ずりっ……。
…………ア。
ひょいって抱っこ、さりまちた。
きゃあ、うさ、咥えた袋を落としちゃうー!
「……」
無言のままうさを抱っこちて、うさが落しかけた袋を、キャッチちてくりたのは……。
「なんだ、コレ」
あ・藤原しゃん、でしぃ〜。
久しぶり。御久しぶり、でしの。お元気でちぃたの?
「……塩鮭?」
あ、うん。そうなのぉ。
今日は商店街の売り出しの開始日でネ。引き換え券を持っていったら、塩鮭が一匹、もらえるのぉ〜。
文太パパは興味なくって、引き換え券をポイってゴミ箱に棄てたけど、うさが拾って、今、行って来たの。
「冷たくて、重いよ」
うん。すごくリッパな鮭でちょ?タダのモノとは思えないでしぃ〜。冷凍だから暫くもつし、今のうちに塩を流しちゃえば、そんなに塩辛くもならないでしぃ〜。
「大通りの広場から、ここまで持って来たのか?」
うん。今日のお昼ご飯に、ちよーと思って、ちっと焦っていたの。
でも、良かったぁ〜。藤原しゃんが来てくりて。
塩鮭、お好きでしぃか?
「好きだけど……」
言いながら、藤原しゃんはズンズン、歩いて行きまし。うさは藤原しゃんのお腕の中から通りを見ましぃの。今日は寒いけど晴れて、なんとなく、愉しい気持ちの日でしぃネ。
「……ただいま……」
藤原しゃんは、玄関じゃなくってお店の方に、ずいって顔を出しまちた。
お客さんに、御豆腐を売ってた文太パパより早く、
「まぁー、たっくん、おーきゅうなってぇ〜」
お客さんたちが大騒ぎ。藤原しゃん、人気ものでしねぇ〜。
いつもテレビで見とるよ、とか。
よか若衆になんなはって、女ん子がほうっとかんやろ、とか。
盛り上がるオバサンたちにペコッと頭を下げて、うさうさは、塩鮭とともに、御台所へ〜。
んふふ。一匹あるから、どんな厚切りも出来ましの!
んふふふふぅ〜。
御昼ごはんは、カンタンに。
野菜やカマボコ、おからの炒め煮と、ホタテのお煮付け。このホタテ煮は、うさが作ったのじゃないでし。清二しゃんが届けてくりた、京ちゃんの実家の旅館で作られて、いるの。オイチイ、のぉ〜。
そりと、二センチくりゃいに厚切りちた塩鮭の、切り身をじぅじぅに、焼いて。
うぅーん。いい鮭でし。ぷりぷり、ちてましぃ〜。
はい、二人とも、いっぱいゴハン、食べて、ネ。
「今年は早かったな」
文太パパがそう言って、ちゃぶ台にお座り、ちまちたの。
「いつもは正月ギリギリまで、東京に居るのによ」
「……うさぎが心配だったから」
「仲良くしてたぜ。なぁ、うさぎさん」
うん!うさうさは、文太パパと、仲良しぃ〜♪
「……こき使いやがって。毎日、こんなにメシ、作らせてんだろ」
「また美味いんだ、このうさぎのメシ。おい、うさぎさん、ビール出さねぇか」
えぇー。
まだお昼間、でしぃよぉ〜。
そりに文太パパ、お酒、呑むとくぅくぅ、寝ちゃってぇー。
お昼にお豆腐を買いに来たお客さんに、お返事はイビキだったり、いたちまちぃ〜。
「ビールぐれぇ大丈夫だって。拓海も居るんだしよ」
「返って来た早々、店番かよ……」
藤原しゃんはぼやきまし。マ・しょうゆうことならオッケェ。うさは冷蔵庫から、ビールを二缶、もってきて。はい、どーじょ。
「ホンットにこき使ってんな、オヤジ」
「バカ言うな。俺ぁ、うさぎの許可がねぇと、ビールも飲めねぇんだぜ」
「鮭まで取りに行かせやがって」
「ん?あぁ、この鮭、商店街の配りモンか、へぇー。うさぎさん、貰ってきてくれたのか」
てへっ♪
「ありがとよ。俺ぁ面倒くさくってな。第一、店、ほったらかして塩鮭一匹、貰いに行くのもナンか、な」
ご褒美にほら、呑めよ、って、文太パパが小皿にビィルをくりまちた。ありがとう〜。
うさうさは、ペロペロ。そちて、塩鮭をアムアム。いい気持ちィ〜。
あ!藤原しゃん!
「……、なに」
塩鮭のお皮、食べないでしぃか?うさに、ちょうだいぃ〜!
うさ、鮭の皮、ダイスキなのぉ〜。
「あぁ、はい」
アムアム。ふぅ。オイチィ〜。
しょーいえば、水戸黄門しゃまも、鮭の皮がダイスキだったんだってぇ。
厚さ五寸の鮭の皮があれば、三万石と取り替えてもいい、って言ったんだって。
「へぇ。まあ、確かに美味いが」
文太パパもおスキ?
「あぁ。俺はダイスキだ」
じゃ、なんで藤原しゃんは食べ食べ、ちないの?
「……鱗が、さ」
ウロコが?
「残ってそうで、怖いんだ。魚の皮って。口が切れそう」
藤原しゃんの言葉に、プッ、って、文太パパが吹き出しマチタ。
お箸を放り出しそうにヒィヒィ、笑っていまし。パパ、笑い上戸?
「同じこと、言いやがる……、はははッ」
「……ナンだよ……」
文太パパの笑い声に、藤原しゃんも、ちっとびっくり。
「お前のお袋が、まったく同じこと言ったぜ。まだお前が腹に入ってるときに。ありゃ何年前の冬かな。あれも確か、商店街の配りもんをあいつが貰いに行って、そんで昼飯、喰ってたときだ。」
「……へぇ……」
藤原しゃんの、おかぁさん?今はいない、おシトでしぃのね。
「あんまり好き嫌いしない奴だったが、魚の皮だけは、俺の皿に、いつも突っ込んだ」
「へえー」
くすくす、文太パパは笑い続けてまし。藤原しゃんはビールを飲み終えて、オカラにお箸を伸ばしまし。うさ、ゴハンつぐね。はい、どーじょ。
「ありがとう、うさぎ」
てへへ。いっぱい、食べてぇネ。
「うさぎさん、ナンか歌わねぇか」
えぇー、お唄ぁ?お昼間なのにぃ〜?
「いいじゃねぇかよ、こいつが帰って来た祝いだ。ほら」
あ。御ビールのおかわり、ありがとぉ〜。んく、んく。
……ぷはぁ〜!
ハイッ!うさうさ一号、お唄を歌いましぃ〜!
「待ってました!」
「……」
無言のまま、藤原しゃんもオテテを叩いてくりまちた。てへへ♪
♪さぁさ、アナタも、うさうさ・ダンシングダンシング♪
ダ・ダ・ダ・うさうさ・ダンシング♪
うさと踊ればココロが晴れる♪おちっぽ振れば、みんなイチコロ、
おちりフリフリうさダンスぅ〜♪
「ははは」
文太パパ、上機嫌でし。
「……かわえー……」
藤原しゃんにもそう呟かれて、うさはとってもいいキモチ。ランラン♪
でも。
そんなうさにも、悩みが、アルノ。
カレンダーを見上げて、はぁー。
ねぇ、藤原しゃん。
「?」
にぃにぃは、いつ帰って来れるの、カナ……?
うさ、待っているのはいいんだけど、ネ。
もーすぐ多分、誕生日、なの。
うさ、自分のお誕生日、よく知らないんだけど。
お正月には、もぅ、にぃにぃに貰われていたから、今ごろのはずなの。
……もちかちたら、もぉ、過ぎちゃったかも。
うさの、初めての御誕生日、ナノニ……。
「それは……」
お言葉に、詰まった藤原しゃん。
「ははは、うさぎさん、それで最近、カレンダー見てたのか」
笑う文太パパ。ちっと酔ってるみたい。
「バカだな。そのカレンダー、見てもナンにもならねぇぜ?」
エ?
「うさぎが生まれるのは満月の夜なんだ。だから、月齢を見なきゃあ、な。えーと」
ごそごそ、新聞を手にとって。
「師走の満月はまだ、だいぶ先だぜ。太陰暦だと、今日はまだ11月のうちだ。今年は11月がだぶってる年だったからな」
……。あ、そう、なの……。
てへへ。良かったぁ〜。
うさ、にぃにぃに、お誕生日のこと、忘れられたかって思っちゃった。
心配、ちて損、ちちゃいまちたぁの〜。
「ほら、うさぎさん、呑めよ」
あ、うん。ありがとう〜。
「よしよし。カワイイ奴だ」
てへ♪
うとうと、眠るうさうさの上にふわ、ってタオルが掛けられまちた。
藤原しゃんかな、文太パパかな……、どっちにちても、ありがとう……。
……くぅくぅ……。
「拓海。このうさぎ、飼い主に返すのか」
「迎えが来たら。当たり前だろう」
「そうか。ならお前、嫁を貰え」
「……はぁ?」
「別に煩いこたぁ言わねぇよ。愛嬌があってカワイイならそれでいい。酒も、ちっとは呑めた方がいいな。ちっとの酒で陽気になって、歌いだすような女がいい」
「オヤジィ」
「だいたいお前、幾つだ。その年まで女房も居ないナンザ、情けなさ過ぎるぜ。俺がお前の年には、お前、小学校にあがろーかって歳だったぜ」
「オヤジの結婚が早すぎんだよ。出来ちゃったしやがって。女房欲しけりゃオヤジが貰えよ。祝福してやるぜ」
「バカいいやがれ」
「ガキが出来たら俺が車、教えてやるよ。その頃にゃオヤジ、ヨイヨイで足腰、たたねぇかもしれねーからな」
「てめぇみたいなヘタクソに、任せられっか。おい、それよりうさぎの誕生日」
「分かってる。連絡、しとく」
しょこへ、お店からお客さんの声がちて。
「はい」
藤原しゃんはお店に出て行きまちた。文太パパは、お座敷に、ごろーん。ねむねむのうさをタオルごと抱き寄せて、お胸に抱いて、ねむねむ。
……ごめんね、文太パパ。
うさは、にぃにぃのうさぎなの。
パパは、パパのカワイイコを、見つけて、ね。
スーッと眠る、文太パパ。つられてうさも、くぅくぅ。
お昼寝、キモチイイでしね。
おやすみ、なしゃい……。
ある日ある時・うさうさ、文太パパに誤魔化される