うさうさ物語・29

 

 

 くぷくぷ……。んふふ……。

 あぁ、いい気持ちでしぃ……。

 みんなとオカラを食べて、ぽんぽん一杯になったうさうさは、みんなと寄り添いあって、こててん。

 みんな、あったかでし……。みんな、毛皮、ふかふかでしね。京ちゃんちぃは、大きい旅館だから、めんとりした後の野菜屑とかダイコンの葉っぱとか、いっぱい出るから、ゴハンたっぷりで……、いいトコロでしぃよね……。くぅ、くぅ……。

 久しぶりに仲間たちに囲まれて、ねむねむのうさうさがふと目を開けると。

 ありり、まわり、真っ暗ぁ〜。

 ま、うさはうさぎで、夜目がききましが。……ありり?

 もう、夜でしの?なんで京ちゃん、迎えに来てくれなかったの……?

 うさがちっと混乱ちていたら、仲間のうさぎたちが。

 若ぼんとキレイか人の来なさったが、あんたがあんまり、気持ちよー寝とったけん、帰りんしゃったよ、って。

 うさに教えてくりました。

 ……にぃにぃ?

 にぃにぃが、迎えに来てくりていた、の?

 きゅうーん!うさ、急いで帰らなきゃ!きっとにぃにぃ、寂しがって、まし!

 扉に突撃!あ、開かないぃ〜!

 もう帰るとね。泊まって行かんとね。ひさしぶりとに、って。

 仲間たちが、言ってくりまちたけど。

 ありがと。みんな、ダイスキでしのヨ!

 んでも、今日はもう帰りまし。うさ、ご主人サマをあっためてあげなきゃ。

 うさが居ないとにぃにぃ、淋しくて泣いちゃうんでしの。

 ただでさえ、ハンサムしゃんとあんまり一緒に居れなくて、淋しがりやのにぃにぃ、でし。

 ふーみんも、おうちに帰っちったしね。

 あ、うん、そうなの。京ちゃんと一緒に居た、キレイなシトが、うさの家族なの。

 優しいんでしぃのよ、てへへ♪

 帰るなら、そこの戸棚から窓にとびついて、出られるよ、って、みんなが教えてくりて。

 うさうさは、ウンチョ!って飛びつきまちた。

 窓枠の桟からも一度、みんなの方を向いて。

 マタネ、バイバイ、みんな、とくにおじじしゃま、ゲンキで居てね、って。

 オテテを振り合ってから、うさはお外に、ぽてっ。

 暗い夜道を、一目散にぃ〜♪

 にぃにに、向かって、駆けてゆくぅ〜♪びゅいーん♪

 ……とか、歌って駆けていたら!

 あ・ひゅーん!

 にぃにぃが、坂の下から、こっちに向かってましぃー!

 も一度、お迎えに来てくれたでしネ!うひゅひゅーん!

 にぃ、にぃ〜!!

「アイテッ!」

 ちょうどよく屈んだハンサムしゃんの、体を駆け上って頭を踏み台にちて。

「このヤロ、うさぎっ!!」

 うさは、にぃにぃの、胸元に飛び込みまちた!!にぃにぃ〜!!

「……お帰り、うさぎ」

 ただいま、ただいまでしの。ゴメンね、遅くなっちって。……怒ってないでしか?

「まさか。お前がよく眠っていたから、もう一度、迎えに来たんだよ」

 お腹すいてないか?夜食をもらってあげるよ、って、にぃにぃは、言いまちた。

 うわぁーい、うさ、嬉しいでしぃ〜。

 そう、京ちゃんちぃは、高級旅館。ホテルの利便性を兼ね備えた!っていうのがウリでしから、夜食と飲み物の、ルゥムサァビスもあるんでし。24時間、おっけぇ、で♪

「はい」

 む、お供がナニか言ってましぃのヨ。

「俺も。粗食でこき使われて、フラフラです」

 あぁー!ウソツキィ〜!!

 美味しいご飯、オナカイッパイ食べてるってゆった、くせにぃ〜。

 うーそつき、ウソツキ。あのね、にぃにぃ〜!

「……札幌行かねぇ?」

 う、ぴ?!

「そいつ、連れてさ。婚約者に会わせてやろーよ」

 んぷー!うわぁ〜!!札幌!極北なきうさしゃまの、お住まいぃ〜!!

 んふふ。よろちぃ、でし。黙ってて、あげましの。

 

 

 お部屋に帰って、にぃにぃはうさうさのために、うどんを頼んで、くりまちた。

 ついでに、ハンサムしゃんのために、お握りセットと、おつまみとおビール。

 お部屋には、若女将しゃんからの差し入れ・山廃仕込の焼酎が!

 にぃにぃ〜!!うさ、飲みたいぃ〜!!

「いいよ。寒いから、お湯割りにしような」

 うん!

 ねぇ、ハンサムしゃん。

「おぅ!」

 おうどん半分あげるから、おつまみを、ちっと分けてくだしゃいナ。

「いいぜ、ほら。うさぎの好きなナッツもある。お湯割り、するならちょっと待ってろ。えーと……」

 おにぎりの中の、梅干をちっとだけ、杯の中に入れて。

 ハンサムしゃんが、お湯割りを作ってくりましの。

 ポットのお湯じゃない、ストォブの上でしゅんしゅん、沸いたお湯で。

 ふぅふぅ……、んく、んく……。ぷはぁ〜!!

 おぉい……、ちぃぃ……。

 しゅごく、おいちぃ、でしぃ!梅干のカケラをちっとだけ、沈めたお湯割り、しゅごくあいましゅう〜!!

 うふぅーん、も一杯ぃ〜!!

「おぅ、いいぜ!」

 くぷくぷ。美味しい……。でしぃ……。

 夜道を駆けた寒さと疲れに、シミワタル、この潤い。……はふぅ……。

 ねぇねぇ、にぃにぃも、飲まない?

「……そうだな。いただこうか」

 うさがあんまり美味しそうにのみのみ、しゅるから喉が乾いてきた、って、にぃにぃは言って。

「おっけ。ちょっと待ってて」

 ハンサムしゃんは一旦、お部屋を出まちた。足音たてずに駆けてって、戻った時には、小鉢に梅干を、こんもり盛ってきてましの。紫蘇も、たくさん。

素焼きのコップももって来て、にぃにぃには、そりで作ってあげまちた。にぃにぃも、おつまみセットの上のサラミを齧りながら。

「あ……、本当に美味しいな……」

 ぐびぐび、のみのみ。

「だろ?ここの板さんに習ったんだ。体にもいいらいしぜ。梅干、アルカリ食品だから」

「ふぅん……」

 うぅーん。喉をしゅるしゅる、おりていくこの、オイチサ。

 はふぅーん。シアワシ……。

「うさぎ、ほら」

 ……あ、チーカマ。

 ちぃず入りカマボコ、うさ大好き。んでも、ナンかお色がヘンでしの。うっすら灰色。

 お口に入れてみたら……、みた、ら……。

 う・ぴーん!!

 おいちぃ、おいちぃ、オイチィイィィー!!

 なにでしの、こりは。無茶苦茶な、オイチシャ!

 ここ、こりが本当に、カマボコ?!

「ここの板さんの試作品。お手製チーズカマボコだって。混ぜ込むチーズの種類と大きさに苦労してるらしいんだ。うさぎ、どれが美味いと思う?」

 三種類、カマンベール・ゴーダ、そして黒胡椒入りのナチュラルチーズ。うさうさは、三種類とも、はぐはぐ。全部、おいちぃでしぃ〜!!

「お前、試食に向かないうさぎだな」

 だって本当に美味しいんだもん!

「ここの板さん、かまぼこ作りじゃ、知られた人なんだってさ。すっげー美味いよなぁ。うち帰るとき、頼んで売ってもらおうぜ」

 ……ぁ。

 ………………おうち……。

 ……う、ん……。

 …………………………。

「……どしたよ、うさぎ」

 う……、うぅん、ナンでもない、でしぃ。

 ち、ちっとだけ、思い出しちった、だけ……。

 おうち。……、さーちゃんが居る、おうち……。京ちゃんが植えてくりたくローバーが生えた、お庭……。

 ぽかぽか縁側に、オザブトン敷いてねむねむ……。

 お隣には、わんこのフィッツ君。ゲンキにちてる、カナ?

 ここの旅館は、とっても居心地がいいでし、けど……。

 おうち。……思い出したら、ちっとだけ……。

 懐かしくって、帰りたく……、なりまちた……。

「……うさぎ、おいで」

 きゃう!

 にぃにぃが、うさを、お膝に抱いて、くりまちたぁ♪

「うち帰りたいよな……。俺も、帰りたいよ……」

 うさを撫でながら、にぃにぃが呟きまし。にぃにぃ、酔ってるノ?

「一緒にあの家でお正月、楽しみにしてたのに、酷い男だよな……。勝手にお前を連れて行くなんて……。俺だって、寂しいのに、うさぎまで連れて行くなんて……」

 あふん、にぃにぃ〜!!

 うさも、うさうさも、淋しかったでしぃ〜!

「本当だったらあの家で、今ごろ仲良く、正月の用意してた、のに……」

 呟きながら、にぃにぃが、コテン、って。

 倒れてちまちまちたぁ、の。きゃうん!

 でも、畳の上にぶつかる前に、ハンサムしゃんが、しっかりキャッチ!

「……悪かったよ……」

 悲しいお顔のまんま、つぶれたにぃにぃの、髪をナデナデ。

「あんたまで寂しいとは思わなかったんだ。俺があんなに淋しかったのに、あんたは平気な顔してたから、平気なのかと、思ってた……」

 ハンサム、しゃん。

 …………オバカ、でし。

「本当だな」

 うさに逆らわず、ハンサムしゃんは、苦笑。

 ……、あ、うさもナンか、よっぱらっちった、みたい……。

 にぃにぃの、お膝の上から、コテテン。

「おっと」

 うさをキャッチして、ハンサムしゃんが、おざぶに置いてくりまちた。

 奥のお部屋から、タオルを取り出して、うさに掛けてくりましの。……アリガト。

「……、さて、と……」

 あ。

 もちかちて、ナンかたくらん、デル……?

 にぃにぃ、おっき……、おっき、ちて、ぇ……。

 キキイッパツ……、でしぃ……。

 ココロで思っても、うさの目蓋は重くって。

 ハンサムしゃんがにぃにぃを、お床のとられた奥のお部屋へ運び込む、気配だけは、感じていまち、た……。

 

 

 翌日。

 うさうさは、にぃにぃと、餅つきのご見学。

 京ちゃん、ハンサムしゃん、頑張ってぇ〜!!

 ……んでも。

 どちた、でしぃの、ハンサムしゃん……?

 ナンか、やけにフラついてまし、ヨ?

 そりでも必死に、いっしょーけんめい、杵を振り上げ振り下ろして、ましぃケド。

「どーしたんだろぉなぁ?」

 あ、にぃにぃが、ちっと意地悪な、お顔。

 んでも、しょんなにぃにぃが、うさうさはダイスキ!

「はい、センセ」

 若女将しゃまのおぜうさん、志帆ちゃんが、にぃにぃに、黄な粉餅を作ってくりまちた。

「うさぎさんも、どうぞ」

 うさにも、茹でた小豆と黒砂糖のお餅を!

 ありがとう、でし!

「ね、ほら。京ちゃんのお餅の方が美味しいでしょ?」

 志帆ちゃんがいいまし。

 うん、そでしぃ、ね。

 キメが細かくて、つるつるのぷりぷり、でし。

 ハンサムしゃんのも悪くはないけど、コシがもひとつ、足りましぇーん。

「そうだね。でもきっと、まだ慣れてないだけさ。次は負けないよ」

 にぃにぃが、言いまちた。

 ハンサムしゃんの背中が強張りまし。

 ……もちかちて、にぃにぃ、虐めてるの……?

「馬鹿力は火事場だけじゃないよなぁ、啓介?」

 ……う。

 怒ってる。怒ってましぃのよぉぉぉぉー!!

 新しいもち米が蒸しあがって、石臼に移されまちた。

 ハンサムしゃんが、杵先で粒を押しつぶして、ゆきまし。

 ……頑張って……。

 頑張らないと、ハンサムしゃん……。

 無事に新年、迎えられない、でしよ……。

 

 

 

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