うさうさ物語37・うさぎの誠意。

 

 

 ……、伏せ……、ぴょこっ!

 伏せて、ふせて……、ぴょこっ!

 んふふ。えへへへ。きしししししし♪

「……、ぎ……」

 あぁ、うさ、カワユイうさぎに戻れてよかったなぁ〜。

「うさぎ、ナニやってんだよ、お前」

 お、ハンサムしゃん。ハンサムしゃんこそ、ナニちているの。

 膝丈のおズボンに、袖口がえぐれたタンクトップ。とっても涼しそうな装いで、こんな地下室に、ナニちに来たの?

「ワイン蔵に、ワインとりに来たんだよ。お前は?」

 うさ?うさも、地下の貯蔵庫、しょの一部がワイン蔵になっている、ソコにオリーブオイルを取りに来たの。おいちぃチーズが届いたから、オリーブ油でマリネちよーと思って。途中で、この鏡を、見つけて遊んでたの。

 涼しい地下室の、壁に作りつけられた鏡。大きい姿見で、出入り口を映してまし。きっと昔は、こりで地下蔵に出入りしゅるシトを見張っていんたじゃないのかな?入り口からよく見えて、蔵の中を映していましぃの。

「遊んでたのか。ナニが楽しーんだ?そんなに、ぴょこんぴょんこ、跳ねて」

 この鏡、魔法の鏡なの。

「……は?」

 薄暗くって、ぼんやりちてるけど、うさの言うとおりのものを映してくれるのぉ〜♪

「なに言ってんだ、お前」

 むむ、信じてましぇんネ。まぁみてて。

 うさうさは、鏡のすぐ近くまで、ホフク前進で、ヨジヨジ。

 鏡のすぐ前まで、進んだら、鏡に尋ねまし。

 カガミよカガミ、鏡しゃん。世界で一番、カワイイうさぎは、だぁれ?

 ……ぴょこん!

 見て、見て見テェ〜!うさだって!きゃはーん♪

「うさぎ……」

 なぁに、しょの不服しょーなお顔は。足りないなら、も一回しましぃよ!

 カガミよカガミ、鏡しゃん。世界で一番の、にぃにぃにアイサレテいるうさぎは、ダァレ?

 ……ぴょこん!

「いいな、お前、生きてくの楽しそーで。あーぁ、全くよ、悩みなさそーだしなぁ」

 ムム、失礼な!うさにもお悩みくりゃい、アリマシィノヨ!

「ヘェ、初耳。ナンだ?アニキのパンツ、被って踊ってたのがバレたか?」

 ううん。そりはバレてましぇん。……ねぇ、ハンサムしゃん。

「おぅ」

 ちょーどよかった。相談に乗ってくりる?

「なんだよ。マジでナンか悩んでんのかよ」

 ハンサムしゃんが、ちっと真剣なお顔になって。

「話してみろよ、なんだ?」

 うさのお話を聞いてくりよーと、いたちまち。優しいでし。

 あのね。

 ……うさ、実は。

 ……、明日の朝、ちっと困った、ご用事があるの。

 うさうさね、どーも、しょの。

 ……恋、さりちったみたい、ナノ……。

「は?」

 ハンサムしゃんは、突拍子もない声をあげまちた。

「お前が?恋?されたって……?誰にだよ……?」

 うぅ、そりは、言えないの!だってしょのヒトが恥をかいちゃうモン!

 しょのシト、悪いおシトじゃないのね。うさな優しくていいシトなの。んでもね、うさはにぃにぃのうさぎだし、婚約者の極北なきうさぎしゃまも居るし。

 お付き合い、しゅる訳には、いかないの。

「ちょっと待てよ。付き合うって、どーゆーイミなんだ。遊びに行こうとかってんじゃなくてか?」

 うん。だってそのシト、『オレをオトコにしてくれ!』って、うさにゆったんでし。

「あぁ……、そっか……、じゃー、そっちのイミだよ、な……。……多分」

 明日の朝、待ち合わせちているの。うさ、お返事を、ちなきゃいけないの。

 どー言ったら、傷つけないで、ごめんなしゃいできるのカナ?

 ハンサムしゃん、そういうこと多かったでちょ?ハンサムしゃんは、どーちていたの?

「ゴム、持って行ってたかな」

 ……ぷ?

「んで、ヤっちまうんだよ。だから人気のないトコか、待ち合わせ場所からそーゆー場所まで、うまく引っ張ってく」

 ……ほえ?

「オンナがうだうだ、言い出したら、キスして口塞いで、あとは押さえつけてやるだけだ」

 ……ハンサム、しゃん……。

「後からレイプとかナンとか言われたら、『俺のこと好きって言ったじゃねーか』で、チョン。まぁ、そのまんま、泣いて罵って居なくなる女も居れば、都合がいい時に乗りまわせる便利な女になる時もある。歩留まりは、一割半くらいだったかな」

 ……そりって、犯罪、ぢゃない、のぉ……?

「俺のこと好きってんなら、デートからABCなんてたるい真似はゴメンだぜ。女と付き合えるかつきあえねーかなんて、乗り心地ためしてみなきゃ、分かんねーじゃんか」

 昔とった杵柄、という感じでうそぶくハンサムしゃんと、そりを冷やっこく眺めるうさ。

 一人と一羽は。

「楽しそうな話をしているな」

 いきなり階段口から、降ってきた声に。

「ギャ……ッ」

 ウキュン!

 石畳の上で、ぴょんとね跳ねまちた!

「ア……、アニキ……」

 薄暗い地下室でも、ハンサムしゃんの顔色が、真っ青になっていくのが分かりまし。

「うさぎ、おいで」

 にぃにぃは、うさにおテテを、伸ばしてくりまちた。

「プールサイドで飲もうと思ってワインを取りに来たんだ。どれが美味いと思う?」

 ハンサムしゃんが遅いから、ジブンで来たでしか?

「アニ、アニキ、その……、この鏡、魔法の鏡なんだぜ!」

 いきなりハンサムしゃんが、お床に屈みこんで。

「カガミよカガミ、鏡しさん、アニキをこの世で一番愛してる奴はダレダ!」

ぱっと起き上がって鏡に映る、パフォーマンスをご披露。

にぃにぃは、なかなか笑ってくりましぇん。

「あ、信じてない?も一回、やるぜ。カガミよカガミ、カガミさん、この世でアニキのこと、一番だいじに思ってる奴は……!」

 ハンサムしゃんはカガミの前で、屈んだり跳ね起きたり、いっしょーけんめい。

 にぃにぃは、そりをじっと眺めてまし。ちょっとずつ、オメメから険がなくなって。

「カガミよカガミ、カガミさん、この世でアニキが居ないと、一日だって生きてらんねー奴は……、俺だ!」

ふぅ……、いいでしねぇ、ハンサムしゃんは、悩みがなさそうで。

ぴょんこぴょんこ、跳ねるハンサムしゃんを眺めながら、うさうさはタメイキでちた。

 

 

……そちて、翌日。

朝早く、うさは起き上がりまちた。

うさは毎日、にぃにぃのベッドでねんね、ちていまし。もちろん隣には、標準装備のハンサムしゃん。この二人、なんだかこのバカンスでは、二人ともうさを離さないの。勿論、日に何度か、二人で篭っちゃうこともあるけど、済んだらうさを迎えに来てくりて、一緒にネムネムなの。

うさは、起きたらまず、にぃにぃのほっぺに、すりすり。

ハンサムしゃんの、頭をナデナデ。

そりから、二人の間から、ぴょん!と跳ねておベッドのボードの上へ。てとてと、端っこまで来て、お床にも一度、ぴょん!

お寝室の扉には、うさぎ用のくぐり戸を作ってくりているから、うさは、しょこをカタンっていわちて、お廊下へ。ぽてぽて、お台所へ。

はふぅ……。

南スペインの、おいちぃトマトや、おナスや、チィズやハムを、アムアムできる、日々のごはんは、うさのタノシミで、お台所は、うさの遊び場だったんだ、けどネ……。

今朝だけは、憂鬱。だってしょこに、待ってるシトが居まし。

うさ、しょのシトに、「ごめんなしゃい」しなきゃならないの。はふぅ……。

傷つけないよーに、ジョーズに出来るかなぁ……?

 

ぼてぼて、うさは歩いてゆきまちた。

石造りの、建物の中は涼しいでし。外壁の厚みは一メートル近くて、暑さ・寒さを、そりで防いでいるの。

ぼてぼて。ぽてて。お台所の前に立って、はあぁぁぁぁぁー。

このスペインに来て、こんなに朝が、憂鬱だったことはありましぇん。

んでも、ユーキを出して、うさは、カタンと、お台所の扉を押しまちた。にぃにぃとハンサムしゃんの寝室と違って、ここの扉は軽いから、うさでも押せば、内側に開くのでし。

 お台所にはもう、先客が、いらっちゃいまちた。

「おはよう、うさぎ!」

 おはようでし、ふーみん。……なに、どーちたの……?

 輝く笑顔、眩しい白いエプロン。そりに、白いタオルを頭に、巻いたりしちゃって……。

 ナンか、チガウシトみたい……。

「三角巾がなかったんだよ。効用は同じと思ったけど、ダメか?」

 ……ナニが。

「昨日のうちに爪は切っておいた。切り傷とか、怪我もないよ。朝から風呂に入って、手はよく洗ったよ」

 ……そりが、ナニ……?

「さ、俺に料理を教えてくれ、うさぎ!」

 ……エ……?

 ……おりおり……?

 ……、えぇっ?

 なぁに、そり。ふーみん、うさに、『俺をオトコにしてくれ』ってゆったじゃない!

「言ったよ。頼むよ、うさぎ。俺は、俺は……!」

 ふーみんが珍しく、握り拳を作ってリキんでまし。

「いままでの人生で、あんなに自分に絶望したコトはなかった……!」

 ……ハヒ?

「涼介に、あの高橋涼介に……!」

 にぃにぃが、どーちたの?

「ぼっちゃんだって、言われる日が来るなんて……ッ!」

 ……エ……?

 

 ふーみんは、暫く、口惜しさに拳を震わせてまちた。んで、落ち着いて、うさにお話し、ちてくりたのは。

「うさぎが居なかったから、ドイツに行って暫くは、三食、外食していたんだ」

 サラダにしゅるレタスを洗いながら、ふーみんは話してくりまし。。

 うさは、薄切りビアソーセージを、パックから取り出しながら、ふんふんと、頷きましの。

「けど仕事が忙しくなってくると、どうしても食事は不規則になるし、ドイツじゃレストランの営業時間は短いし、スーパーもすぐ締まるし、コンビニなんて陰も形もないし、な」

 うん。そでしぃネ。日本はその点、とっても便利でし。24時間営業のファミレスなんて、日本以外では滅多にお目にかかれましぇーん!自動販売機、というモノすら、ドイツには殆どナイナイでし。やっぱり日本は、治安がいいのかなぁ〜。

「ある日、俺は夕食を食い損ねた。帰りが遅くて、店も全部、しまって居たんだ。惨めな、悲しいキモチでアパートに帰ったよ。カップラーメンの買い置きがあるのだけが救いだった」

 うぅーん。ふーみん、カップラーメン・コレクタアでしもんね。んでも、夕食がソレだけなんて、体に悪いでしヨ!

「そう言ったよ。先に帰っていた涼介も。そうして俺に、夕食を作ってくれたんだ」

 にぃにぃが?んふふ、優しいでしぃ〜。

「全くだ。薄切りのパンに缶詰のポテトサラダと、ハムを挟んだだけのものだった。でも凄く美味かった。ビールでそれを、ばくばく食ったよ。何個も作ってもらって、あらがとうっていったら、涼介は笑って皿を引いてくれた。皿は紙皿だった。ぽいって、ゴミ箱に棄てられた」

 ふむふむ。

「そしてあいつは言ったんだ。仕方ないな、お前、一人息子だもんな、って……!」

 ふーみん、一人息子なんでしか。

「それから毎朝、朝食は涼介が作ってくれたよ。いつもサンドイッチだったけど、パンや具材が毎日変わったから飽きなかった。ライブレッドの薄切りにはロール・モップ(鰻の酢漬け)の缶詰、コーンブレッドには塩味のきいたソフトサラミ、黒パンにはスモークサーモンの缶詰、とかな」

 うーむ。缶詰とハムとパンの組み合わせとは、奥が深いのでし。うさとにぃにぃがご贔屓のパン屋しゃんは、『カルト・デ・パン』っていう、リーフレットを配ってくれましの。ハム屋しゃんのお隣のパン屋しゃんだから、子羊のレバーのソーセージには狐色のバネットとか、トマトサラダにはオニオンかオリーブのパンとか、親切丁寧に、書いてあるのー!

「……、俺は、ドイツ語を、読めないんだ……」

 あぁ、そでしぃか。可哀相に。ナデナデ。

「もう外食には飽きてた。毎日、日替わりメニューで、月に一度も同じ料理が出てこないイタリアのバールと違って、ドイツ人は、毎日まいにち、同じもの食べてるな。それに外食は高くつく。落ち着かないし、仕事で夜更かし・早起きするときも多いし」

 うん、タチカニ。

「だから朝だけでも、涼介が作ってくれるのは有り難かったよ。でもせめて、交代にしようって、俺は言って、ある日、俺が朝食を……、サンドイッチだけど、作ったんだ」

 ふむふむ。……そりで?

「大失敗だった。よく、分からないが、プチ・サレに、スモークサーモンを挟んだみたいだ」

 あぁ、そりはダメダメでし。プチ・サレは風味があってオイチィパンでしが、塩気がちっと強いのでし。そりに、塩気の強いサーモンなんて、いけないコトでしの。そりにサーモンには、ちっと、匂いがあるでちょ?ライブレッドと一緒に食べれば『風味』になるそりでしが、シンプルな味わいのプチ・サレでは……。

 ソッチョクにゆって、臭かったのデワ?

「……大失敗だったよ……」

 ふーみんは、宙を仰いで、タメイキ。

「涼介は、それでも全部食ってくれた。そうして言ったんだ。俺を慰めるみたいに」

 仕方ないな、お前、一人息子だもんな、って?

「その瞬間の俺の絶望が分かるか、うさぎ。あの涼介に、俺は、俺は……、ぼっちゃんだって、同情されたんだ……!」

 ……う、ううぅぅぅぅうーん……。

「俺は決意したんだ、その時に。うさぎが帰ってきたら、料理を習おう、って!」

 う、うぅぅぅぅーん。

 まぁ……、どーきはともかく、そりはヨイコト、でしよ……。

 おりおりが出来るからって偉くもないし、出来ないからって偉くなくもないけど、できると便利なコトではありましの、おりおり。

 ナンか一つでヨイからね。にぃにぃの、サンドイッチみたいに。ハンサムしゃんのブタうどんみたいに。

 イッコ作れたら、そのバージョンで、危機は乗り越えられましの!

 えっと、ナニがいいかなぁ〜。うぅーんと、ええっと……。

「うさぎ、これは洗っていいのかい?」

 ふーみんが、うさにお尋ねちまちいた。お手には、かいわれ大根を持ってまし。

 ……貝割れ大根。

 を、うさうさは、お台所で、栽培ちていまし。

 ドイツの都会では、生野菜が手にいれにくかったり、新鮮じゃなかったりしゅるから、うさは日本の、清二しゃんちぃから、貝割れ大根の種をたくさん、貰って来まちたの。

 種物屋さんでも売ってまし。袋いっぱい、200円くりゃいでし。コップの底にティッシュを敷いて、水を含ませて、貝割れ大根の種をぱらぱらぁ〜♪日の当らない戸棚に置いておけば、数日で食べゴロに育ちまし。毎日、種まきをちていれば、毎日、食べられましぃのでし。

 ま。日本だと、使いやすいパックが28円、とかで売ってあるから、わざわざ、栽培する必要はないでしが、ドイツでビタミン不足にならないためには、とても便利なモノでしの。

 清浄野菜だから、洗わなくていいし、もともと千切りみたいだから切る手間もかからないし……、しょーだ!

 ふーみん、ふぅみん!

「なにかな、うさぎ?」

 はい、うさ、ふーみんに、このタネをあげる!

 そーちて、うさの、貝割れ大根・メニューを伝授、するからね!こりでふーみんも、立派なおりおり人に!

「え……、あ、ありがとう、うさぎ」

 てへへ。……というわけで。

 次回のうさうさ日記は、貝割れ大根・メニュー尽くし(近日後悔予定)でし!

 

 

ある日のうさ日記・スペース切れで続きはまたこんど〜♪の、回でちた!