うさうさ物語・39  うさぎの完全復活

 

 

 ぽてぽて、よじよじ、うーんちょ!

 ふぅ〜。高級ホテル・ロイヤルエグゼクティブルゥムの、ベッドは高くて、おのぼりしゅるの、ちっと大変でしぃ〜。

 クィーンサイズの巨大おベッドの、ど真ん中には、ハンサムしゃんがぽてん。綿毛布を巻きつけるみたいにちて、深いねむねむの中に居まし。

お疲れ、なんでしの。

 最終戦の前に、うさがハンサムしゃんのマネェジャアとちて、日本へ同行ちて、既に数週間。

 最終戦からずいぶんたったケド、今日がよーやくの、ハンサムしゃんの休日。

 ツンツン、アンヨでお顔をつついても、ぴくりともしましぇん。

 時刻は昼前、お外は快晴、秋晴れのよい天気。

 素晴らしいこの日を、うさは、完全復活記念日と、いたちまし。

 梅の季節に病に倒れて、八ヶ月。

 おけけが抜けておっきぃネズミしゃんと間違えられたり、にぃにぃと離れて寂しかったり、いたちまちたが、もぉ大丈夫!うさは元気に、なりまちた!

 心配ちていただいたみなしゃまのために、新しい、コムサの赤いスカァトを穿いて!

 そのお裾を、オテテで握り締めて、ステップのたびにひらひら、しゅるよーにセットちて。

 うさの、完全復活をご披露しゅるダーンスを!

 いざ、踊り、ましぃ〜!!!

 

 

♪さぁさアナタも、うさうさ・ダンシングダンシング♪

 ダ・ダ・ダ、うさうさ・ダンシング・るんたった♪

 

「ぐぎゃあぁぁあー!」

 む、ハンサムしゃんが目覚めた!

 起き上がろうとしまし。ダメでし!

 起き上がられると、ステェジが斜めになっちゃうから、うさはハンサムしゃんの、ドタマを踏んづけまし。

 ウンチョ!

「ハンギャーー!!」

 よち、怯んだ、この隙に!

 

♪うさが踊ればココロが晴れる、おしっぽフレば、みんなイチコロ、

 うさと踊ろう、うさダンス・るんたった♪

 

「ぐおぁぎゃあーー!!」

 うむ、よいお声でし。うさのリズムに、ぴったりあってまし!

 

♪うさはアニキがスキスキ、ルンタッタ♪

 とてもにぃにがスキなのヨ、ホイサッサ♪

 

♪にぃにぃスキスキ、だいすきそりが、

 あなたとうさの、アイコトバ!♪

 

♪さぁさコヨイも、うさうさ・ダンシングダンシング♪

アナタも踊ろう、うさダンス・るんたった♪

 

最後の『ルンタッタ♪』で、うさは、ハンサムしゃんの背中から、ぽんと跳びまちた。

「このヤロ、うさぎっ!」

 そーちて、うさを薙ぎ払おうとちたハンサムしゃんのオテテを避けてベッドサイドの照明の上へ。

 さらに、サイゴの、シメは、ハンサムしゃん、のー!

「ガ……、ぐぁ……ッ!」

 えーい!無防備な、みぞおちに、頭から、アターック!

 バタッと倒れたハンサムしゃん。

 そのまま、ひくひく、起き上がりましぇん!

 うさうさ、勝利、でしぃー!

 うさの完全復活、宣言―!!!!!!

 

 

 

 失神ちた、ハンサムしゃんが、再び起きたのは、昼過ぎ。

 ワゴンで届けられた、ご飯をうさは、お給仕ちてあげまし。

 もうずいぶん、長いこと、うさはこーやってあげてましの。

 ハンサムしゃん、今期はしゅんごーく、調子が良かったの。

 んで、冗談じゃなくて、奇跡が起こらなくても、優勝圏内だったの。

 さしゃがのハンサムしゃんも、ストレスでいらついて、食欲を無くして、そんで、ネ。

 チームのオーナーしゃまから、うさにね、依頼が来たのでし。

ハンサムしゃんのマネージャーになってあげて、って。

 うさと居るとハンサムしゃん、和んで落ち着くから、って。

 うさ、本当はにぃにぃと離れたく無かったけど。

 にぃにぃが、ハンサムしゃんのことをしゅんごーく、心配ちていたから。

 代わりにハンサムしゃんの、お側に居てあげた、の。

 はい、ペッパーステーキの、クラブハウスサンドイッチ。

 ハンサムしゃん、よく零すから、ちゃんとナプキンをお膝に敷いて、ネ。

 ブラックオリィブと、ビィルもオイチィでしよ。こっちはうさもお相伴。アムアム。

「……、あぁ……」

 ハンサムしゃんは、まだぼーっとちていまし。てへへ。うさのフレンチ・カンカンダンス、刺激が強すぎたかなぁ?

「……終わったんだな……」

 大都会・トーキョーが眼下に見下ろせる、明るいリビングのソファーにお座りちて。

顎が外れるほど、お口を大きく開かないと、噛み切れないサンドイッチを、ベッドルームの手前の居間でもぐもぐいたしながら。

「……今年も終わった……」

 ハンサムしゃんは、らちくない溜息。

「……また勝てなかった……」

 はいはい、ヨチヨチ。

 元気、出すでしヨ。

「……、チクショー……」

 済んだことは仕方ナイナイでし。ご飯を食べて、お酒を呑んで、休んで元気を出して、またがんばるでし。

「アニキのチームに、行きてぇ、よぉ……」

 あぁ、泣き出しちゃった。まだちっと、セイシンが不安定なハンサムしゃんでしの。

 うさは、すかさず、ベッドサイドの写真立てを持ってきて、あげましの。うーんちょ!

 ほら、にぃにぃも、ナキナキのハンサムしゃんに困ってまし。

 笑って、そちて、安心しゃしぇてアゲテ。

「……うさぎ」

 はい。

「アニキのチームに入ってサ、あのアパートに俺も一緒に住んでサ、毎朝、お前と買い物に行って、朝も昼も夜もアニキと一緒に食って、もちろん仕事も夜も、ずーっと一緒に……」

 うんうん。夢みたいでし。きっと楽しいでし。

「一緒に、暮らしたかった……」

 うん。きっと、いつか出来るでし。でから、今は元気を、出してくだしゃいな。

「大体、藤原拓海が、あいつが悪いんだ、根性出さねーから!」

 あ、元気出たカナ?

 元気が出ると、このフレーズになりまし。

「最終戦で、あいつが根性で二位に入ってりゃ、俺は総合も優勝だったんだぜ?」

 ハイハイ、その続きは、うさもぉ、覚えちゃいマチタ。

 ハンサムしゃんと藤原しゃんと、ナントカというレーサーしゃんが、三つ巴で、僅差で、最終戦にもつれ込んで。

 開始前、トータルポイントが一番、上位だったのは、ナントカ氏。

最終戦で、ハンサムしゃんは優勝ちたけれど、ナントカ氏は二位で、藤原しゃんは三位で。

 たった2ポイント差で、ハンサムしゃんは、総合準優勝。

 最終戦が、藤原しゃんが二位でナントカ氏が三位だったら、ハンサムしゃんの方が、3ポイント差で、総合優勝、だったんでしぃヨネ。

 残念でちた。んでも、勝負は結果が全て、でし。ただち、その『勝負』には人気の勝負もありましの。

最終戦、動員客数、記録更新、オメデトォ。花とシャンパンのシャワーも浴びたでちょ。

「ちくしょう、世の中、ナンか間違ってるーッ!」

 間違ってるのは、契約以上に、チームオーナーしゃまに弱みを握られているハンサムしゃんでし。

 優勝ちないと、F1引退を、許してもらえないんでちょ?

 来年、またがんばるでしヨ。

しゃ、ごはんの後は、おコーヒーにしましぃか?そりとも、紅茶?

「緑色のちゃあ、くれよ」

 はいはい。とくとくとく……。

 ナンてやっていたら、お電話が。

ヨジヨジ。

 はぁい、こちら、やさぐれたケダモノのお部屋でしぃ〜!

『……そうなのか?』

 あ、にぃにぃ!お元気でしか?

 にぃにぃのケダモノは、疲れてぐれて、やさぐれていましぃの。

 んでも昨日で、取材もスポンサーまわりも終わって、ヤレヤレ、でしの♪

『それはよかった。……うさぎは、元気かい?』

 うさが元気なら、ドイツに帰って来て欲しいな。十一月中旬から、ラボに篭るから。

 うさぎも一緒に行こう。ラボといっても、場所はヘル・ハイネルの別荘の、お城なんだよ、楽しいよ、って。

 誘ってもらえて、うさはランララン♪おパンツの替えを片手に、にぃにぃのモトへ行きましのー♪

「もしもぉーし!」

 きゃあ!

居間からとんできたハンサムしゃんに、お電話をとられちったぁー!

「もう一頭の、御用はございませんかぁー!」

『……そうだな。交渉してみよう』

 受話器を持ち直して、腕を組んだ気配。

 うさは、ハンサムしゃんのパスポートをテーブルに出して、クローゼットからスーツケースを、ずるずる。

『お前もヘル・ハイネルのマシンに乗って、もう無関係者じゃい。雑役夫くらい、させてもらえるだろう』

 えっと、パンツと、シャツと、二位のトロフィーと、えとえと……。

「可愛くないこと言うねぇ。……会ったらひぃひぃ、いわしてやるからな」

 ナニいってるの、ハンサムしゃん。鈍いシトでしね。

 うさぎのうさが、一人でドイツに帰れるわけないでちょ。

 うさを連れて会いに来いって、にぃにぃは言ってるのに。

 はふぅ、ご旅行の、したく、完成〜。

 あとはホテルのお隣の、東京シティ・エアターミナル発の、成田行きリムジンバスにのんの、しゅれば完璧ィ〜!

「もしもし、ハイヤー一台、大至急で頼む!」

 む、ハンサムしゃん、マテシバシのないオトコ。

「成田までだ。15時までについてくれたら、チップ弾むぜ!」

 スーツケースを片手に、うさをお肩に、ぽてんと載せて。

 ハンサムしゃんの旅支度、完成。

 ……よく、頑張った、でし……。

 ハンサムしゃんも、そのお世話を、いっしょーけんめい、やったうさうさも。

 にぃにぃに、いっぱい、イイコイイコ、ちてもらいまちょーネ!

 

 

 

ある日のうさ日記  二頭のけだもの物語・完