うさうさ物語・48

 

 

 くぅくぅ、シュピピ。うぅーん……、ネムイ……。

 目覚めたうさは、お耳をピンと、立てまちた。が、あまりのサムサムの空気にもう一度、伏せッ!

 うぅ、サムサムの季節がやって来まちた。みなしゃまお元気でしか?

 うさうさは、婚約者の極北なきうさぎしゃまとのおデートを控え、お風邪に気をつけて暮してマシ。

 雪道を歩くかりゃ、コケて捻挫ちないよーにもちなきゃ〜♪

 うさがねむねむ、ちている場所は、なんと、にぃにぃとハンサムしゃんの寝室でし。

 二人が眠る、広いおベッドの枕もとにバスケットを置いてもらって、しょの中にお座布団を敷いて、にぃにぃのお下がりフリース・トレーナーの中にモゾモゾちて、ハンサムしゃんのおさがりのダウンジャケットを被って、あったか・ふわふわ、ネンネちていまし!

 不思議なの。いつも、ねむねむしゅるのは、居間のソファの下なのに、目覚めると、うさここに居るの。

 きっと夜中に運ばれているの。ハンサムしゃんとにぃにぃが『仲良く』ちた後に。

 えへ。うさは愛されるうさぎなのでしぃ〜♪てへへへへ。

 しょの二人の、愛に応えるタメ、うさは起きまし。いちにぃの、ピョコンッ!

 うぅ、サムサムぅ〜。でもがんばって、ポテテテテ。

 まずは玄関に行って、新聞うけの新聞を、ンショ。お口に咥えて、ヨイチョッチョ。

 新聞はにぃにぃが起きたら読めるよーに寝室に運んで、中のチラシは、うさうさが先に見るでしの。

 アサゴハンは、札幌在住うさのペンフレンド・さゆちゃんが教えてくりた、自家製イカの塩辛があるかりゃ、そりを出して、お味噌汁と卵焼きでじゅーぶんでし。にぃにぃがおっきちてかりゃ、作って間に合いまし。

 ゴシンはタイマーで、炊き立てで出来上がってマシ。

 うふ。イカの塩辛、食べるのタノシミでしい〜♪

 みなしゃまにも、イカイカの塩辛の作り方、ご披露いたし、まーし♪

 

 

『塩辛は作り方というほどのものは無くてこちらでは何も作らない人でもイカのごろ焼きとともになんとかやれる一品です。

・まずイカを捌いてワタを破らないようにとっておく。
・身は皮はむかず、さっと洗って虫や汚れを取って一枚に広げる。
・足は吸盤をとっておく。
・ワタに黄な粉餅を作るくらいの感じで満遍なく塩をまぶす。
・身にはさっと塩を振っておく。
・キッチンペーパーに巻くかタッパーを斜めにして出た水がたまるようにして冷蔵庫へ。
・水が抜けたら身を食べやすいように切って(足も耳も)ワタを破って和える。
・塩味は特に足さなくても大丈夫。
・青唐辛子をきざむのも美味しいです。

あんまり塩辛く作らないほうが手作りっぽくて美味しいです。
私ももっぱら酒の肴でご飯にはあまりあわせません。
保存とかも考えてなくて明日塩辛で飲もうという感じに作って食べきっちゃいます。
塩はいい塩のほうがいいみたいです。』

 

 

 とのことでちた。えへへへ。さゆちゃん、教えてくりて、ありがとー!

教えてもらったとーりに、うさ作ってみたの。上手に出来てるかなぁ。

 タノシミにちながらキッチンと続きの居間の床暖房のスイッチを入れて、お部屋を暖めて、日当たりのよい窓際でうさは、分厚いチラシを分類ちて眺めまし。ふむふむ。

うーん、年末商戦、華やかでしぃねぇ。お、このおせちは美味しそう。でも、京ちゃんちぃのを、もう注文ちたしねぇ。京ちゃんちぃのが、もっと美味しいし。

 あ、日本酒が安い。今日の買出しはこりにけってーい!ハンサムしゃんが起きたら車を出してもらいまちょ。

 あとは、む?この時期にマンションの展示会?よっぽど売れ残ってましぃのネ。お気の毒に。

 ふむふむ。タマゴが……、お肉が……、ふーむふむ。

 うさ、朝、チラシを見るの、ダイスキなんでしの。

 にぃにぃは、

『いまはお休みなんだから、うさぎそんなに一生懸命、しなくていいんだよ』

 と、ゆってくりたけど、でも。

 生き物は、毎日、ゴハンを食べないと生きていけないでしぃ〜。

 そうちておいちぃモノを食べないと、元気に生きていけないでしの。だからうさ、ゴハンを作るの。

『安売りにモエんなよ、貧乏みたいじゃんか』

 と、ハンサムしゃんはゆったけど、うさ、そりは違うと、思いまし。

 安く買えるものを、高くかっちゃったら、そりは損というものでし。

 高いものを安く買えたら、得でちょう?

 損と得だかりゃ、チラシチェックはヤメられましぇん。そりは有能と無能というコトでし。

 うさは有能・役立つうさうさぎ、でし!

 ……む。

 む、む、む。ムムッ!

 

 

 ある日の朝、東京都郊外、都内とはいえ県境近くの、周囲は山林と果樹園、田畑も散在する田舎の町の片隅で、天下のF1レーサーにして、休暇中の今はF3000チーム監督の専属運転手は、目覚めた。

 起きると同時に隣に腕を伸ばし、夕べも愛し合った恋人の肩を揺する。うーん、と、曖昧な声。まだ眠そうに、男と反対側へ寝返りをうつのを追いかけて、肩を抱きしめてうなじにキス。

くり返すうちにくすくす、恋人の唇から笑い声がこぼれる。目が覚めたらしい。男はさきにベッドから出て行こうとはせず、リモコンでファンヒーターを点けて部屋を暖め、別々にくるまった毛布の上から恋人の体を撫でて、起きてと仕草で繰り返し、乞う。

今はオフだから。休暇で、休みの時期だから。

一秒だって離れて居たくないのだ。

朝から晩まで隣に居る。うさぎの方がよほど聞き分けがいいぜと恋人が呆れるくらい。それでも、シーズン中の飢餓がまだ癒えない。とにかく近くに居たいのだ。カラダの何処かが触れていないと不安で泣きそうになる。

それを承知の恋人は数分間、背中を男に撫でさせた後でゆっくり起き上がる。枕もとに置いてある新聞をざっと、見出しだけ読んで、それからパジャマのまま、二人は顔を洗うべく洗面所へ。脇には新聞を挟んだまま、寝室のドアを開けると。

「……うさ?」

 うさぎが落ちていた。子供用の毛糸のパンツを腹巻きにして、自分より大きな皿の上に、うつ伏せに。

「あ?ナンだよお前。またさみしがり病か?まさか違うよな。ずーっと一緒に遊んでるし」

「どうしてお皿の上に乗っているんだい?」

「これがアサメシ?違うよな。イカがあるって言ってたよな」

「ん?何をもってる?」

 大皿の上でうさぎが、手にした紙片を、ひらひらと振ってアピール。

「チラシか?なにか欲しいのか?」

「ナンだよ、おねだりかよ。どれどれ……」

 二人がうさぎの手元を覗き込むと、それは。

「なに。マク○ナルドクーポン券?国道××店、この一枚で三セットまで特別価格、328円……?」

「うさ、ハンバーグが食べたいのか?よしよし、お待ち。啓介と買いに行ってくるよ」

優しい声でそう言うと、長い耳が、ふるふると左右に振られる。

「ん?違うのか?どうした?」

「昼でいい、ってんじゃねーの?味噌汁の匂いしてるし」

「いいとも。うさぎの言うとおりにするよ」

「えー。俺もっといーもん食べてぇよー。外行くんなら、ビビンバ食べよーぜ、石焼の方」

「よしよし。じゃあ、ハンバーグは帰りに持ち帰りで買っておやつだな」

「うん……。……って、アニキ。今の口調、ナンかひっかかるぜ」

うさぎに言うのと、あまりにも同じ声だったから。

「どっちも俺のカワイイのだからな」

 大皿の上に横たわるうさぎを、白い手が抱き上げ、胸に抱きしめる。

「……なら俺のことも抱いてよ」

 開き直ったらしいオトコが強要し、

「お前は大きすぎる」

 オンナが冷静に判断を下す。

「代わりに俺を抱きしめていいぜ。朝メシを食ってからな」

 台所ではほかほかのごはんが、住人たちを待っている。

 

 

 

 

                ある日のうさ日記・やすあがりのうさぎ